途中から、皇帝が紡ぐ言葉をただただ受け流していた。
いや、そう思いたかったのかもしれない。
受け入れたくなくて。
信じたくなくて。
それほど私の脳が、身体が、全てがその真実を否定しようとした。
「それなのに、その少女はこうして成長し、私の前に現れた。
もしかしたら心のどこかで緩みが出て、僅かに急所を外してしまったのかもしれない。
そう考えた時、少しばかりの後悔と憤りに苛まれた。
そんな時に私の怒りに惹かれたセイと契約を結んだんだ。
あの時、君の赤で彩ったはずなのに……なぜ君は普通に生きているんだ?剣城真琴。」
私には、その時の記憶だけがない。
『……違う……。』
私の中にいる呉都さんはそんな人じゃない。
人を殺すことに喜びを感じる殺し屋と一緒にしないで……。
『……違う……違う……ッ!!』
そう、これはきっと皇帝が考えた物語だ。
その少女は私じゃない……ッ。
それじゃあ、まるで……。
「君が殺したんだよ、志浪呉都を。」
その言葉は、深く胸に突き刺さり、私の心を壊した。
「黙れッ!!」
そう叫んだのは黒蜥蜴だった。
その声色にはどこか焦りが生じていた。
「あぁ……君たちはずっと尽くしてきたんだったな。
決して知られないように。悟られないように。
ずっと隠してそばにいられるように。
だが……それももう今日で終わりだ。
選べ。
自分たちで晒すのか、私の手で晒されるのか。」
私には、皇帝の言っている意味が分からなかった。
考えることを放棄した。
それなのに……真実は残酷すぎる。
これも私への罰なのだろうか。
呉都さんを殺してしまった私への。
黒蜥蜴は少し黙ったあと、そっとフードに手をかけた。
そしてその顔を晒した。黒鮫と黒豹も同様に。
月明かりが彼らの顔をじわりじわりと照らした。
『……嘘……でしょ……?ねぇ……なんで……ッ!』
どうしてあなたたちがここにいるの……ッ
誰も……そんなこと言ってくれなかったじゃない……。
ねぇ、ちゃんと教えてよ……ッ。
『……楽……桜悠……来都……ッ』
あの日の屋上であなたたちと出会えて良かったと思った。
沢山の日々を過ごして初めて学校が楽しいと思った。
この時間が永遠に続けばいいのにって思った。
でも……それは私だけだったの……?
どれだけ現実から目を背けようとしても、何も変わらなかった。
そこに立っているのはいつも私のそばにいてくれた3人で。
でも……誰も私の瞳を見てはくれなかった。