「ごめんな、蘭丸。
お前をこの世界に導いちまったのは俺だ……。
俺のせいでお前はこんなになっちまったんだな。」
何を言ってるんですか……?
「私は貴方のお陰で、本来いるべき場所にこれたんです。今の私は幸せですよ?」
そして私はこれからもこの世界で生き続ける。
ボス直々の依頼だった。
"志浪呉都の大事にしている女を殺せ。
裏切り者には、それ相応の罰が必要だ。"
私はそれを全うするだけ。
私の手の中にいる少女を見つめる。
気を失っている少女は、気づきもしないのだろうな。
どれだけ呉都さんに愛されているのか。
そして自分のせいで呉都さんがどうなってしまうのか。
もう今の呉都さんにあの赤は作り出せない。
そうさせてしまったこの少女を……許すものか。
「私は依頼されたのです。
この少女を殺せと。
だから貴方には申し訳ないが……これをもって私たちの関係を終わらせましょう。」
「蘭丸、やめろッ!!」
せめて最後に、最高の赤を魅せてあげましょう。
かつて貴方が私に魅せてくれた以上の、美しい赤を。
そうして私はナイフを持った手を横に払った。
呉都さんの大事にしていた少女は嫌いだったが、最高の赤を魅せてくれたことは褒めてやろう。
それだけ、少女の首から出た赤は美しかった。
これで私の任務は終わった。
「さようなら。私の尊敬"した"人。」
もう他人となったあの人を背に、私はその場から去った。
私をこの世界に導いてくれたせめてものお礼として、貴方の代わりになりましょう。
これからは私が、暗闇に花を咲かせましょう。
真っ赤な真紅の花を。
end