約束の日。



場所は皮肉にも、初めてblack killersと戦った倉庫だった。



〈真琴……大丈夫?〉



『……あぁ。覚悟はとっくに出来てる。』



私の靴の音が倉庫に響き渡る。



響いて……消えて……また響いて……また消えて。



中には誰もいなかった。



いや、まだと言うべきか。



瞼を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる。



ビビの心音が聞こえる。



そして、私の心音も。



それは段々と間隔が狭まり……やがて私たちの心音はカチリと嵌った。



『……調子いいな。』



〈えぇ。それはもういつも通りに。〉



その時、気配を感じた。



振り返ると、そこには3人いた。










「あぁれぇ?なぁんでここにwhite castleがいるのかなぁ?」



黒鮫。



「キャハッ、もしや俺たちハメられちまったカァ!?」



黒豹。



「どうやらお前も呼び出されたようだな。」



そして、黒蜥蜴。



予想はしていたけれど、まさかblack killersが3人揃って登場するとは思っていなかった。



『……答える義理はない。』



お互い顔を隠し合い対面する。



月明かりが倉庫を……私たちを照らす。



私たちは何も喋らなかった。



私たちを呼び出した当の本人が登場していないからだ。










「こうやって見ると豪華な面々だ。」



倉庫に積まれた荷物の上。



そこに呼び出した張本人は優雅に座っていた。



「皇帝がボクたちを呼び出したのぅ?」



「あぁ、その通りだ。
私がこの舞台をセッティングした。」



飛び降りて着地する一連の動作に無駄はなかった。



そして、皇帝とセイの他にもう1人いることに気づいた。



「彼は私の相棒で、忘却の皇帝"帝王"だ。
少し人見知りでね。
フードを被っているのは気にしないでもらいたい。」



あれが……殺し屋トップのもう1人。



背は私と同じくらい。



だけど……帝王が纏う雰囲気は本物だった。



「さぁ、これでキャストは揃った。
ショーの幕開けといこうじゃないか。
ある日から始まった……終わりなき物語を。」



物語……?



それは……私の知りたかった理想の真実とは程遠いシナリオだった。










「昔々、1人の殺し屋がいた。」



そして皇帝は語り始めた。



1人の死によって全てが始まったあの日のことを……。