それから3日後。
ビビに促されついていくと、路地の一角が見える建物の屋上についた。
〈あと5分くらいしたら、きっと来るわ。
でも絶対じゃない。
向こうの使徒にバレないように探知するの大変だったんだから。〉
「……助かったよ。」
言いたいことを全て飲み込んで承諾してくれたビビ。
ヒントをくれたシヴァや燐理。
ひたすら様々な面から調べてくれた由樹さん。
バラバラだった事柄が、綴られるように交わった。
〈でも、1つだけ約束してちょうだい。
どんな結果になろうとも、自分を犠牲にしないで。
それだけが……私の願いよ。〉
「……もうそろそろ時間だね。」
その願いに……私はYESとは答えなかった。
出来ない約束は、もうしない。
下をのぞき込むと、少しして男2人が走り抜けてきた。
だが、そこは行き止まりで。
2人は恐る恐る後ろを振り返る。
後ろからは……フードを被った男が歩いてきた。
肩には黒兎を乗せて。
「……来た。……え……?何で……ここ、に……ッ?」
その男は幾度となく私の前に現れた男。
「……黒……鮫……ッ!!」
あの背丈もあの歩き方もその全てが、黒鮫だと言っているようで。
どうして今まで気が付かなかったんだろう。
あんなに人を殺せるのは、それを仕事としている殺し屋しかいないというのに。
今すぐにでも飛び降りてやろうと身を乗り出しかけたところで、ビビに止められた。
〈今降りても、真琴に出来ることはないわ。
せめて……手をかけるギリギリまで待たないと。〉
渋々腰を下げるが、それでも心は今にも飛び降りる気満々だった。
「ねぇ?獲物を取り逃した君たちにはぁ、罰を与えないとだよねぇ?ねぇ、そう思うよねぇ?サラ。」
〈はい。
無能は生涯役に立たない生き物です。
抹消して構わないかと。〉
「やっぱりぃ?
じゃあぁ……やっちゃっていいよねぇ?」
「待ってくれッ!たまたま邪魔が入ったんだッ!」
「あの護り屋の仲間だッ!次こそは仕留めるから…ッ!」
どうやらあの2人は燐理に殺しの邪魔をされたらしい。
当然だ。人を殺すやつが悪い。
「次ぃ?次なんて君たちにはもぅないんだよぅ?
チャンスなんてそぅ簡単に転がり込んでこないからねぇ。サラ。」
〈はい。〉
突然、黒兎の口から水球が生まれた。
「……水の能力……。」
〈えぇ。そして、その契約者は水を変形させるの。
だから溺死……。〉
水球が黒鮫の手に収まると、力を供給されているからか膨らみ始めた。
あの中に閉じ込めるのか……?
「……ビビ、もういいよね?」
〈仕方ないわね。怪我はしないでよ。〉
ビビの身体から生み出された短剣を手に、狙いを定め……水球に向かって放つ。
突然の奇襲に黒鮫が驚いているうちに飛び降りた。
「な……ッ!?なぜ護り屋がここにッ!!」
「お前も俺たちを殺しに来たのか!?」
『……殺し?お前らと一緒にしないでもらいたい。
お前らが黒鮫に殺されるのなんか別に興味もないが、俺の目の前で殺られるのは癪なんでな。さっさと行け。』