それからまた数日が経ったけれど、まだ手がかりらしいものは掴んでいなかった。
事件が立て続けに起こるたびその場所に赴いても、そこには被害にあった人だけが横たわっている。
そのたびに唇を噛み締めることしか出来なくて。
それが歯がゆかった。
でも、1つ分かったことは……無闇に殺してはいないということ。
多分たまたま見てしまったらしき学生とかは、気絶させるまでにしているみたいで。
だからこそ思う。
そうやって制御が出来るのなら、なぜ暴走してるような素振りを見せるのか。
"その契約者は秋が嫌いなんだ。"
シヴァが言っていたことを思い出すと、この季節に何か決定的な何かがあったのだと思う。
そう考えると、少し……共感してしまう。
私も1年の中で1番嫌いな日がある。
その日は、巻き戻りたくても戻れない……最悪な日。
そういうわけでどうしようもなかった時、燐理がふと言った。
「犯人が神賢者なら、そいつのこと考えてみればいいんじゃね?
犯行場所がどうとかじゃなくてよ。
同じ神賢者として、自分だったら次どうするとか。
それは、真琴にしか分からねぇことだからな。」
神賢者として次にとる行動……。
その時、シヴァの言っていた言葉が頭をよぎった。
"神賢者は引き寄せ合う。"
護り屋としての知識と、神賢者としての運命。
そうして少し考えた所で、1つの突破口を見つけた。
「……連れていってくれない?ビビ。」
〈……私は何も知らないわ。〉
「……神賢者は引き寄せ合うんでしょ?
なら……ビビだって居場所くらい分かってるはず。」
シヴァが第四神賢者の使徒を知っていたことで、ビビも知っているはずだと思った。
無責任に契約者を選んでいるわけじゃないとしたら、使徒はきっと全ての神賢者を知っている。
じゃなきゃいつか使徒同士で綻びが生じてしまうから。
〈……もし私が知っているとして、それでも教えないと言ったらどうするの?〉
「……俺は俺の大切な人を護りたい。
ようやくそう思えるようになった。
ビビが仲間に執着していた理由が、少し分かった。
だから……お願い。」
ビビはただじっと私を見つめた。
私もただじっとビビを見つめた。
きっとたった数分しか経っていないけれど、その時間はとてつもなく長く感じられた。
〈私は真琴を護るために存在するの。
自ら危険な場所に飛び込もうとする真琴を止めないわけにはいかない。
でも、それでも行くというのなら……私は真琴に従うわ。〉
その言葉の真意に少し胸が痛くなった。
ビビが私を契約者として話したことがなかったからだ。
ビビの本当の気持ちとしては行かせたくない、けどそれを掻き消すように使徒として"従う"と言った。
それを飲み込み、気づかないようにした。
「……ありがとう。」