(シヴァside)
第一神賢者が去った数分後。
隠す必要のなくなった気配は、ゆっくりと近づいてくる。
〈……盗み聞きはよくないと思うよ。〉
「……お前が勝手にいなくなるからだろう。」
そんな過保護な性格じゃなかっただろう、と内心思う。
「……教えてどうするつもりだった。」
〈……そんなのどうも考えてない。
いずれあの子は自分で真実に辿り着く。〉
「……なら放っておけば良かった。」
何を焦っているんだろう。
今更決意が揺らいだなんて、言わないでくれよ?
〈……決めたはずだよ。アノ人の意思を僕たちは継ぐと。
そんなにあの子がこっちの世界に関わることが怖い?〉
「……もうあいつは充分こっちの世界の住人だ。」
なら、何を怖がっているんだろう。
繋がってはいても、僕には心までは分からないよ。
〈……仕方のないことだよ。
この物語は、あの子がいなきゃ終わらない。
今は物語の半分まできたところ。
こんな所でリタイアされたら困る。〉
誰かが傷つくエンディングだろうとも。
全員が幸せで終われるエンディングだろうとも。
この物語にいつかは終止符を打たなきゃならない。
栞を挟んだまま、読まれずに仕舞われ続ける小説なんて……可哀想だろう?
〈……僕たちは既に戻れないところまで来てる。
後悔してるというなら、せめて支えてあげよう?〉
僕は振り返り、来都の瞳を見つめる。
「……後悔なんてしねぇよ。
俺はあいつのためなら何だってやれる。」
そう。
例え来都の気持ちが分からなくても、目的は何も変わらない。
僕たちの目的は、僕たちが出会った日から同じものだから。
end