それにしても、とはづきが呟いた。
「新宿にすら人がいなくなる時が来るなんてね」
地球の環境は文明によってほつれていった。
この星が確実になくなってしまうとわかってから、たくさんの人が地球から出ていった。
「私たちがちっちゃい頃はまだ学校に木もあったし、新宿だって人がいっぱいいたのに」
ふと、横目に「歌舞伎町一番街」と書かれたアーケードの向こうを覗いて見た。
本来ならそろそろネオンが灯り始める頃なのに。
何一つ光っていない。
そして、そのとなりはファーストフード店の看板がさみしくその存在を知らせていた。
だけど。
もう営業されていない建物のなかに、かつての賑わいはなかった。
(むかし、ここに両親と来たっけ)
出来ることは、過去に縋ることだけ。