ズキンッ!
痛いところを突かれた。人の触れられたくない部分に土足で入り込む、この圧倒的イジメセンスは……。
「か、かずこさん?」
「そうだよ! やっと思い出したわね」
僕は彼女からヘッドロックを決められて、髪の毛をグシャグシャにされる。
───む、胸が当たってるんですけどぉぉお!───
ぼくは懐かしさをプラスされたその柔らかな温もりに包まれ、再会の喜びを堪能していた。
───あの泣き虫のヒロリンと、イジメっ子のかずこさん。
他にも居たよな……なんて言ったかな───
小さい頃におままごとを一緒にしていた思い出が、走馬灯のようによみがえる。
「でも、なんで僕がここに居ることが解ったの?」
「私が駅で見掛けたの。用事で駅前銀行に行った時、やけに可愛い男の子が居るなって見てたら……」
「こいつはいつもこうやって男を物色してるんだ」
「なによ、和子だって嫌いじゃない癖に!」
2人は照れ隠しをしているのが見え見えの言い合いを始めた。
「だからどうしてここを?」
ぼくの問い掛けに、ヒロリンはペロッと舌を出して続ける。
「絶対ゆず樹くんだと思ったから着いて来ちゃったの」
「ストーキングだよ」
「人聞き悪いわね。尾行よ」
「変わらねぇ~」
そうか。僕がここに入るのを見届けて、かずこさんを呼んだのか。