勧誘じゃなかったらそうか、あれだ。父の職場の人だ。随分若そうだけど、様子を見に来てくれたんだろう。
「ごめんなさい。父の職場のかたですよね。えと、まだ両親はこちらに来てないんです。えと、僕ひとりが先に来て。えと、ええっと……」
『ププッ、アハハハッ。会社の人じゃないから』
彼女は眉毛を八の字にして笑い出した。
『変わってないね、柏木ゆず樹くんっ』
───んなっ! なんで僕の名前まで知ってんのっ?───
『焦ると早口になってすぐ詰まっちゃって……』
『そして「えと、えと」って言ったきり黙り込む』
最初の子を押し退けるようにモニターに現れたのは、これまた超美形の女の子。
シャープな顎と薄い唇、少し吊り気味で切れ長の目がクールな、ショートボブの女性だった。
「えと、どなたですか。なんで僕の名前を?」
確かにここにきて一番で、表札に柏木のネームプレートを入れた。
でも僕がゆず樹だっていうのを、他人が知る訳がない。
『ちょっと、いいから顔出しなさいよ』
クールビューティーの子が手招きする。親に『知らない人にはドアを開けるな』と言われてたけど、どうやら彼女たちは知り合いの可能性が高い。
『そうそう。は·や·く』
また入れ替わってカワイイ方の子が顔を出す。
───こんな綺麗な子が二人も、どうしてウチにやって来たんだろう───