探していた飼い猫の『変わり果てた姿』に直面した飼い主のそれじゃなかったんだ、そのご婦人の動作はさ!

その猫とは何の関係も無さそうな彼女が、あたかもそうするのが当然とばかりに猫を抱き上げ、さっさとその場を去ったんだ。

「……」

俺は言葉も無いまま渋々車を発進させ、ミラーで後方を窺い見たが、その時はもう既に彼女の姿は無かった。

 そこは駅迄続く商店街。車通りも人通りも少なくない。そんな中、口から血を垂らしている死んだ猫を抱えていたら、きっと周りから奇異な目で見られるに違いないし、抱き上げた拍子に体に猫の血が付いてしまうかも知れない。


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