それからどのくらい時間が経ったのだろう……。
この山に入ったのは午前中だったけれど、とっくにお昼は過ぎてしまっていた。ずっと黙って歩き続けていた史明が、ふと立ち止まった。時刻を確認して、地図と方位磁針を取り出して、現在の場所を確認している。
「多分、この辺りが目星をつけていた場所なんだが……」
そう言いながら、当たりをきょろきょろと見回し始めた。絵里花もそれに倣ってきょろきょろしてみたけれども、辺りは木々が立ち込め、さらに下草も生い茂り、それらしいものは見当たらない。
――……何もないように思うんだけど……。
絵里花は口まで出かかっていた言葉を引っ込めた。ここでそんなネガティブなことを言っていても始まらない。
それに、絵里花は史明の〝読み〟を信じていた。ここに痕跡があると信じて疑わなかった。
「分かりました!早速探してみましょう!」
絵里花はヘビがいることなどすっかり忘れてしまっているらしく、いきなり藪の中へ入って行った。
「え……」
そんな絵里花を目で追って、さすがの史明も呆気にとられてしまう。「おい!」と声をかける前に、絵里花は藪をかき分けて、再び史明の前に姿を現した。
「お城のあった痕跡…って、何を探せばいいんですか?」
「………」
絵里花の、見た目によらない突拍子のなさと、その真っ直ぐで曇りのない眼差しに、史明は言葉を失ってしまう。