重苦しい空気の中。

ようやく家に着いたけど。

そーちゃんは黙ったまま。

何かを考えていた。



私も黙っていたけど。

耐え切れなくなって。

いつの間にかそーちゃんの背中に抱きついていた。



のに。

そーちゃんは肩を震わせて泣いているのかと思いきや。

…笑ってる。



「なんで笑ってるのよ〜」

「普通、先に胸が当たるのに、今の真由はお腹が先に当たるから」

くるり、と私の方を見つめて

「ごめん、真由」

そーちゃんは私を抱きしめる。

私もそーちゃんの背中に腕を回す。

「…あんな事、一生、誰にも言うつもりはなかったんだ」

「うん…」

そーちゃんは少しだけ抱きしめる力を強くして

「あんな女だとは何となく想像していたけど。
いざ、会ってみると、本当に精神的に参るよ」

そーちゃんは苦笑いをしている。

「あの時。
真由が手を握ってくれていなければ。
俺はあの女を殴り殺していたかもしれない」