卵焼き器に油を敷いて、崇さんがやっていたように焼き始める。


だけど、菜箸を回し入れて持ち上げることがうまくいかない。


卵が菜箸から滑り落ち、グシャッと折り重なるようになってしまった。


「ああっ」


「大丈夫、大丈夫。まな板にのせたら、手で広げてみて」


「ところどころ卵が固まってしまったみたいで、ちゃんと広がりませんよ」


「切ればわからないって。気にしない」


「うう……はい」


気にしないなんてことは無理だけど、やってしまったものは仕方ない。


頭を切り替えていこう。