「フツフツと膨らんできたところは、菜箸で叩いて潰して、こう、菜箸を回しながら卵の横から下に入れていく。

向こうまで菜箸が入ったら、そっと持ち上げてひっくり返す。裏は一瞬焼くくらいで十分だ」


崇さんは綺麗に焼けた薄焼き卵をまな板にのせた。


焦げ色もなく、黄色く輝いている。


「すごっ」


私もこんな風に焼けるだろうか。


綺麗な完成形を見ると、同じことをできる気がしない。不安が大きくなる。


「火が通ったら、卵焼き器は火から下ろせば焦げないし、なんなら焼くのは片面だけでも余熱で大丈夫だ。そんなに気負うなって」


「は、はい」


崇さんは私の背を叩いて励ましてくれた。


とにかく、頑張ってみよう。