「歳、何用だ?」
私は、歳の前て座る人物に目をむけ、ながら、歳にそう、なげがけた。
「かっちゃん、島田がとんでもない間違えをしたようだ。」
歳はそう言うと、あごで、人物の顔をみろと、私に指示した。
私は、言われた通りに人物の顔を覗きこんだ。
時が止まった。
「……。」
葉月だった。それも、昔と全く変わらない姿だった。
変わったとするなら、葉月に目線を向ける私の心情であろうか。
私の心情は複雑だった。
私は葉月と離れてここ6年で、人を殺したし、汚いことも、たくさんやってきた。
私はこんな身で、葉月に触れていいと思わなかった。
そして、どうやって葉月に触れて良いのかが、わからなかった。
「久しいな。」
私は目を細め、葉月を慈しむように葉月の姿を目に焼き付けた。
面影も何も残っていなかった私の頭の中へと。
葉月はどこか安心した顔をして、口を開いた。
「お久しぶりです。勇さん。」
そして、私が、忘れてしまった微笑みを見せたのだ。
「歳、何故、葉月がここにいるのか?」
葉月の微笑みを見て思いだした。
私は薄汚れた世の汚い役を引き受ける新選組の局長なのだと。
「かっちゃん…。まだ、聞いてねぇーよ。」
歳は、私が、もっと長く葉月の顔を眺め続けると思っていたのか、少し驚いた顔をしていた。
歳は私の気持ちに気付いていた。
例え、妻子ができ、所帯をもったとしても、忘れることの出来なかった葉月への私の、狂おしい程の想いを。
私が葉月を慕っていることは、歳にしか、分からないだろう。
私は、葉月への感情をあまり、外には、出さなかったし、私は妻子を愛しているような素振りを見せていたから。
さすがに、歳を騙すことは出来なかったし、私は騙そうとも思わなかった。
時に厄介なことにもなるが、少しでも、私の葉月への想いを気付いている人がいた方が、楽だったからだ。
私がそんなことを考えていると、葉月から、声がかかった。
「勇さん、私、今までのことをはなしますね。」
葉月は突然そう言った。
「私がどこの何者なのか。そして、何故、私が長州藩の大物といたのかも全て。」
葉月はあの、凛とした声で、何かを決断したような瞳で言った。
「まず、言っておかなければならないことは、私が今から話すことの全ては、本当のことです。無理に、信じなくてもいいのですが、信じてもらうしか、ないのです。」
私は、そう言い、話を始めようとした。
だが、先程から気になっていたことがあった。 「勇さんと惣ちゃん。お座りください。」
私に再会して、驚いた勇さんはさっきから、立ったままだった。惣ちゃんは、惣ちゃんで、勇さんに気を遣ってか、ずっと立っていた。
気を取り直して、私は、これまで私の身に起きたことをすべて話し始めた。