そして、再び願った。
勇さんと幸せになりたい。
再び私は、あの時代へ舞い戻った。
だが、私が着いた場所はあの神社ではなく、きらびやかで、趣深い京の都だった。
私は、その場で、原因は、何か分からなかったが、倒れてしまった。
……
ツーンと、漢方薬の独特な匂いがした。
瞼が重かった。だが、勇さんに逢いたいと願った私の心は柔では、なかった。
瞼をあげた。
急に目の中に光が差込み眩しかった。再び、瞼を閉じようとした。
当たり前だが、わたしは一瞬見えた、この場所がどこだか理解することが、出来なかった。
私は、再び目を開けた。
この場の状況が、少し、分かった気がした。
その場には、私の嗅覚通りにたくさんの粉、恐らく漢方薬と思われるものがあった。
私は、どこかのお医者さまの世話になったのであろう。
ガタン
急に物音がした。そして、サーと音を起てて、襖が開いた。
その先には、この家の主らしい、初老の優しそうな顔をしたおじいさんが、立っていた。
「気分は、いかがなものですか?」
そのおじいさんは、私の顔を見るなり、そう尋ねた。
「だ、大分良くなりました。」
私は少し、困惑した表情で言った。
「そうですか。それは、よかった。」
老人独特のゆっくりとした、貫禄のある言葉遣いで、私は、自分の置かれている状況にゆとりを持てた。
「貴女は、行く宛がないのですか?」
おじいさんは、再び尋ねた。
「はい。」
私は、ここで嘘をついても、、仕方がないと思い、正直に答えた。
「そうですか。…では、ここで、働いて頂けませんか?」
あぁ、どうしてだろうか?
どうして、この時代の人はこんなにも優しいのだろうか?
いじめに遇っていた私に誰も近付こうとしなかった。
それなのに、行く宛もない、得体の知れぬ小娘をこの時代の人は誰も、放って置かなかった。
それが、どれ程嬉しいものか。昔の私では理解出来なかっただろう。