両親からの愛情をほとんど知らない私を
「私たちは子供がいないから……」
と本当の子どものように、慈しんでくれた周助先生と、その奥様のふでさん。
友達のいなかった私に信じることを教え、
優しさを与えてくれた試衛館の仲間、
土方さん、惣ちゃん、左之助さん、永倉さん、斎藤さん、井上さん、山南さん、平助さん。
そして…
私に、人生で、初めての恋を教えてくれた
勇さん。
本当に暖かくて、私は満ち足りた日々を過ごしていた。
そして、あの日…
私は勇さんと現代で言うデートに出掛けた。
勇さんはさりげなく私を気遣ってくれ、とても楽しい時を過ごした。
勇さんは、私に綺麗な簪(かんざし)を買ってくれた。
誰かに何かを貰うのは、こんなにも嬉しいことなのか。
いや、勇さんだからこそ、私は心が、満たされた気持ちになったのかも知れない。
そして、私は、勇さんとキスを交わした。私のファーストキスは、甘く、暖かった。
しかし、あの甘味な時間は長くは続かなかった。
私はデートの後、いつものように、風呂の湯加減の調整をしながら、勇さんと話した。
私は勇さんと一緒にいる時間を大切に過ごした。それは、今まで経験したことのない、愛おしいという気持ちからだった。
そして、私は、勇さんに告げようとした言葉がある。
だが、その言葉を言うことは叶わなかった。
なぜなら、その代わりに、私の願望が叶ってしまったからだ。
「勇さん。私、…」
その言葉を私は、続けることがなかった。
なぜなら…
私が20**年に帰ってきてしまったからだ。
あの時代についた時に、私は、何気なく腕時計に付いた、ストップウォッチをおしていた。そして、7年もの間それを止めることはなかった。
だが、恐ろしいことに、私があの時代で過ごした7年は、現代の2時間48分だった。
そう、現代で、24分たてば、向こうの時代は、1年過ぎてしまうのだ。私はそれに気付き、いてもたっても、いれなかった。
先ほど帰ってきてから、ちょうど24分たった。
どうしたら、あの時代に戻れるのだろうか?
私は、考えた。ただ、勇さんに再び逢いたいということだけを望み、考えた。