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彼のお陰で会議にはギリギリ間に合った。お咎めもとくになく、発案資料も採用された。
数日後。
「お疲れさま」
「ただ、副社長」
名前で言いかけて換えた。
「そこまで来たから寄ってみたんだ。頑張ってるね」
爽やかに微笑む彼は、185㎝の長身。短めの髪をムースで整え、優しく穏やかな目、すっきりと整った顔立ちのイケメンだ。
そして私の彼氏。
私が30歳になる来年にでも結婚を視野に入れて、と思っていた。
「今夜、食事でもどうかな」
耳元で囁かれ、
「是非!!」
思わず声を張ってしまい、口を押さえる。
新店舗立ち上げの大事な時期だから、みんなには内緒でと釘を刺されていた。
その店が完成したら、私を店長にして、結婚しようと。
幸せだった。
こんなイケメンの彼氏と幸せな結婚。
なんの苦労もない生活。
毎日彼のために美味しい食事を作って待って。
好きなブランドの会社で好きな仕事を任されて。
こんな幸せ、そうそうない。
この年まで待った甲斐があった。