冷たい雨が降りだした。


ついにベンチにも腰掛けず、しゃがみ込んでしまった。


「……バカじゃね?」


声に振り向く。
けれど雨と涙でもう髪はボサボサだ。


傘を片手に持っているナオキ君もなぜか濡れそぼっている。


「悔しかったから俺もスマホ変えちゃってたんだ」


「えっ……?」


「店に行ったら出掛けたとか言われてさ、もう来ないとか言っちゃったしさ、ホントもう終わりだと思ったよ」


えへへと笑う。


「考えたらここしかないかなって。……昔の携帯電話もない頃ってこんな大変だったのかな」


しゃがみ込んだままの私に、背中から抱き締められる。