いってみれば若い子にはわからない、体裁のいい左遷だ。


ふと近付き、耳元で囁く。


「彼をそそのかしてくれたお礼よ」


ぞくりとした。


言いたい言葉は山のようにあるのに、ただただ震える口からは、何も出てきてくれない。


だって彼は………。
結婚を前提にって。


「そういうことだから。そのつもりで。あっ、有給の消化は早めにね?」


何ならこれを機に辞めてもいい、と暗に促された。