距離を取るにはちょうどよかった。この年で彼氏と別れるのはキツいけれど。


一度頭を冷やそう。


こんな気持ちのままお付き合いをするのは、どちらにも申し訳ないし失礼だ。


「あなたが環月さん?」


接客中の円香がハッとする。


私と同じくらいの年齢。
品の良さそうで、仕事の出来そうな、すらりと背の高いのはヒールのせいだけではない。


栗色のふわりゆる巻きした髪。出るところは出、絞まるところは絞まった、目鼻立ちのはっきりした、きれいな女性。


「用件だけお話しするわ。私も忙しいので」


「??はい……」


きょとんとする私に構わず続ける。


「匡次さんの婚約者。葛城宮美です。今月付けで彼とパリに行きます」