「もう面会時間は終わりですよ」
看護士さんが声を聞いて入り口から声を掛けた。
と、その後ろから、
「こんなところで何やってるの?匡次さん。探したわよ?」
いつかのボブヘアの女性だ。
こんなところにまで来たのか、と胸がチクリとした。
「帰るわよ。このことはお父様にも報告しますからね」
「待ってください、あの…」
もどかしそうに言い掛けて、飲み込んだ。
「じゃあ、また」
「彼女のことは諦めるんだね。俺に惚れさせて見せるから」
わざわざ去り際に、言い放つナオキくん。
「余計なこと言わないで」
静かに制止した。
けれど、平静を装えたのか、心配だった。
すごく、すごくドキドキしたから。胸が、キュンとしてしまったから。
「あなたも帰って。……もう来ないで。お店にも」