「あ、俺??ナオキ。ヨロシクっす」


改めてよく見るとあどけなさの残る、可愛いその顔を、ふにゃりと緩め笑う。


「な、あの、苗字は??」


そういうことじゃなくて、と聞き直す。


「それは、な・い・しょ、ってことで。名前くらい言っとかないと困るよね、そりゃ」


えへへと頭を掻く。
それはそうなんだけど。


下の名前だけって。ホストじゃないんだから。
それも困る。
呼ぶこともないだろうけど。


というか。
今日はなんだか朝から気だるい。熱っぽい?


簡単には休めないし、と来る前に市販のお薬を買って飲んではいるものの、効いてるのかどうなのか。


なんとなくぼんやりする。


「試着、いいですか?」


不意にお客様から声が掛かって、レジのカウンターから見上げたとき。


立ち眩みがした。