「この前の」
店の奥、レジの脇に在庫を仕舞う倉庫があり、その隣に事務所がある。
スタッフは常時3人で回すシフト制なので、そう広くもなく、ノートパソコンを置いた事務机がひとつあるだけだ。
二人きりになると、匡次さんが口を開く。
「はい」
「あの、間違ってメールを送ってしまったみたいなんだけど」
なんとなく歯切れが悪い。
「そうでしたっけ」
空々しく気づいていない振りをする。
「ああ、いや、行ってなければいいんだ」
そしてあからさまにホッとする。
「若い男のお客様って、珍しいね?」
「そうですか?たまにいらっしゃいますよ。彼女やお母様へのプレゼント探しとかで」
「そう…、そうなんだ」
言って鼻を掻く。あれっ?と思った。
まさか、………焼きもち??
どの辺りから見られていたのかもわからないけれど、わざわざネックレスを掛けられる姿を見られては。
「あの、彼は…」
「今度の休み、会ってほしい人がいるんだ。空いてるかな」
「あっ、はい…」