と。
「環月さん?」
ハッとして声のした方に目をやると、スーツ姿の匡次さんが書類の入った封筒を脇に持って立っていた。
反射的に、なんとなく、まずいと思った私は慌てて離れる。
「教えてくれてありがとう。店員さん、助かりました」
「…えっ…」
見慣れてきた人懐こい笑顔ではない、いわゆる営業スマイルに切り替わった顔で、丁寧にお辞儀をすると、去っていく彼。
「あっ、ありがとうございました…」
匡次さんの脇を通ると振り返ることもなく、見えなくなった。
なんだろう。
ズキンとした。
「ああこれ、見積書。あと、在庫と備品の棚卸し表、確認したいから出してもらえるかな」
手にしていた封を差し出される。
「あっ、はい。事務所にどうぞ」
ズキズキしながら案内する。
これはなんだろう。