疲れすぎて、陸のベッドで一晩を過ごしてしまった。
陸の目覚ましで、起床。
大きな音で、朝から大迷惑だった。
『最悪』
って、
思わず、発してしまったけど…
目を開けて、部屋を見渡すとサーフィンの準備をしていた。
けど、お互い無視。
何も会話をする事なく…
陸の部屋から出て、お風呂に直行した。
仕事の準備をする事に必死で、何も考えていなかったけど…華さんの顔を見た瞬間昨日の事を思い出した。
今日は華さんの事を見たくなかった。
って、
言っても無理な事だけど…
馬鹿みたいに、陸の事を考えちゃって…
考えても、得する事は一つもない。
なのに…どうにかなっていた。
『思わない』
って、思うほど…考えてしまう。
だから、開き直って考える事にした。
陸の「彼女」は何なんだろう。
安らぎ?
幸せを感じる時間?
私たちが恋人に対して思う事が陸にとってはないんだろうか。
考えても…行きつくのは疑問ばかり。
ただ、ただ…
考えては疲れるばかりだった。
考えない方が自分の為だったのかもしれない。
抱かれるのは…
日に日に日常茶飯事になって行った。
”彼女”とか、”彼氏”とかじゃない。
陸にとって、私は都合のいい女だった。
考えたらキリがない。から、考えない。
この数日間で、考え方が大分変わった。
私はもしかしたら、二重人格なのかもしれない。
陸の彼女の事何て頭にもなかった。
もうこの頃は「自分が良ければいい」って…
自分の脳が麻痺していたのかもしれない。
陸との、この関係が心地よかった。
だから、辞めようとも思わなかった。
主導は陸だけど…徐々に私からも誘うようになっていたのは事実だった。
陸の部屋だったり、
男の人は立ち入り禁止の私の部屋だったり…
バイト帰りにホテルに行く事もあった。
陸と体の関係が続いたのは3ヶ月以上。
我に返ったのは…
陸と華さんが別れた事だった。
きっかけはわからないけど…華さんはアルバイトを辞めて、陸の前から去った。
華さんが辞めたおかげで、1ヶ月という期限を設けてやっていたアルバイトは続ける事になった。
…というよりは、
店長が辞めさせてくれなかった。
最近、楽しくなってきたし、陸の顔を見てもイライラしなくなったし…特に反抗することもなく続けることを決めた。
それより、陸との関係を
『辞めよう』
と、思って…私は勇気を出して言った。
けど、陸は納得してくれなかった。
「は?」
『この関係が嫌だ』
って、
この関係を切るために言ったのに…
「じゃ、付き合おう」と、言う陸。
この、口の上手さに負けそうになったけど…一瞬冷静になって、『考える』とだけ伝えて部屋を出た。
前なら、すぐに『無理』って、断ってるはずだけど…今の私は、出来なかった。
なんでだろう。
自分でもよくわからなかった。
そういう時に限って…タイミング悪く、陸が海外に遠征に行ってしまった。
考える時間を…
神様が与えてくれたのかもしれない。
けど、考えれば考える程…陸に対して、思ってはいけない気持ちが芽生えた。
初めて、
と言っていいくらい…
『陸に会いたい』『寂しい』と、思った。
前では考えられない感情だった。
ただ…私の今の悩みは、陸がどう思っているかわからないって事。