「お前、なにやってんの。」
「あぁ、真弦…」

転んだままの私に手を差し伸べ、声をかけてきたのは柏原 真弦。

真弦とは保育園からの幼馴染みだ。
昔はよく互いの家に行き来するほどの仲だった。
けど今は違う。

私は自分から真弦と距離をとった。
真弦にまで迷惑をかけられないからだ。

それでも真弦は私に話しかけてくれる。

昔みたいに互いの家を行き来はしないが、私の1番の理解者だ。

そして、

「また、涼原にいじめられてんの。もうやめたら?そうゆうの。」
「…うん。ごめん。」
「でも、やめないの知ってるからなんも言わねぇけど。」

私が1番、安心できる場所。

「ありがとう。」
「真白がそれでいいなら、オレはなんも言わないから。」

私がどれだけ最低か、どれだけ酷いか、私の秘密をすべて知ってる真弦。

それでも離れず私のそばに居てくれる真弦の事を、私は手放せないでいた。

真弦はいつでも私のことを思っていてくれて、1番に考えてくれる。
私が何をしても、責めないで、怒らないで、ただじっと、私のことを見守ってくれている。

「今日も行くのか、?涼原のとこ。」
「うん。」
「真白、いつでもオレのこと、頼れよ。」
「……。じゃあね。」

私は真弦の言った言葉に頷けなかった。

だって、私は真弦みたいに優しくなんかないから。