両想い切符〜ふた駅先の片想い〜





私は噴水の前でソワソワしながら待ってた



先輩、少しでもかわいいって思ってくれればいいなぁ。



しばらくすると、電車が到着した



少し急いで降りる先輩の姿が見えた



そんな急がなくてもいいのに…



でも、私服。


カッコイイ…。



シンプルなのに、先輩が着るだけでその服がすごく映えて見える。



凄いなぁ。モデルにだってなれちゃうよ。


あんな人と私、これから花火見られるなんて…




そう思ってると先輩が私に気がついた



「てんぼちゃん!」



そう言って笑顔で手を振る先輩に私はにっこり笑った






「ここまで来てくれて、ありがとうございます」



私がそう言うと、先輩は少し照れたように笑った



「てんぼちゃん、浴衣で来てくれたんだね」



「あ、はい…せっかくだから…。」




「そっか…


めちゃくちゃ可愛い…////」



そう言って先輩は耳を赤く染めた



「えっ///」



「ほ、ほら!!

はやく行くぞ?あっちの電車くる!!」



そう言って先輩は私の手を引いた



券売機で切符を先輩は2枚買って私に渡してくれた

「え!いいですよ!!
切符くらい自分で買います!!!」




「いーんだよ。俺が払いたいだけだし。」



そう言ってくれる先輩がまた好きになった



いつもとは反対側のホームで電車を待つ。


隣にはずっと憧れてた吉岡先輩。



不思議…



さっき駅員さんに切符に押してもらったハンコを見る



20**.08.25


なんて、日付が書かれてある


今日は忘れられない日になるなぁ~


そう思って先輩の切符に目を向けた






「あっ!!先輩!それ!

両想い切符ですよ!!!?」



「ん??両想い切符?」



「そうです!
ほら、この切符の端の数字!」


そう言って先輩の持ってる切符の橋に書かれた数字を指さした



先輩の切符には3703と書かれてあった



「おう、3703?これが?」


「そうです!同じ数字に挟まれてるでしょ?
先輩のは、3。


これ、両想い切符ってゆうんですよ?
で、この数字の間に書かれて数字が確率なんですって!


だからー先輩は70%ですね!」



「へぇー!!そんなのあんの!?
これは、田舎の特権だな


つか、70%か~

どーせなら、90%以上がよかったなぁ」



なんて少し拗ねる先輩が可愛い



「でも先輩!

70%なら、絶対私、傘は持って出ますよ?」




私がそう言うとクシャッと笑って



「てんぼちゃんは慰め上手だな」



なんて私の手をぎゅっと握った






それからそのまま電車に言われて、夏祭りの会場についた



「人いっぱいだなぁ。」


「はい…」



先輩が言う通りかなりの人で溢れかえっている


すると、私の手をまた先輩がにぎった


「迷子ちゃんになんないようにね?」



そう言って笑って私のことを引っ張ってくれる



先輩はいっつもそう。


私のこといつも前から引っ張って、時に立ち止まって…私が後ずさりしようと思ってもさせてくれない。




そんな人だ…



「てんぼちゃん!なんか食いたいもんない?」


しばらくあるいてると、先輩がそう言った。



「私、先輩が食べたいもの食べたい!!!」



そう言うと、先輩はキラッキラの笑顔で



「じゃあー、1個ずつ全部買ってやる!!」



なんて言うから


「もったいない!!!じゃあ、焼きそば!」



と答えると、嘘だし!焦りすぎ!

なんてまたバカにされてしまった。



またしばらく歩いて先輩のあとを手を引かれながら歩いてると、少し人混みから抜けた




「ココ、穴場なんだよな」



そう言って私を座らせてくれた






「下駄、靴ズレしてない??」


「え?はい!なんでですか??」



「してねーのかよ!


少女マンガとかでよくあんじゃん!
靴ズレして、男が心配しておんぶとか、絆創膏はるとかさ!

だからちょっと期待したよね」




なんて言って先輩は笑う



やっぱりこの人は、すっごくお茶目な人だ。




私も自然と笑顔になった



「そういえばさ、ずっと聞きたかったんだけどさ、前言ってた好きなやつのこと、

てんぼちゃん、まだ好き??」



「え??」



「あ、いや、答えたくなかったらいいけど!」



「あ、いえいえ!!

そうですね…まだ、好きです……。」





好きに決まってる。だって先輩のことだもん。


ずっと好きだし、嫌いになれるような要素なんて一つもないんだから。



「そっかぁ。


……じゃあ。これ、あげる。」



そう言って先輩が取り出したのは両想い切符。


ほんとはダメだけど、ここの駅は無人駅だから思わず持って帰っちゃったみたい。








ってゆうか、そんなことはどーでもよくって!


「何でそれくれるんですか!!?」



「だって俺、いらねーもんそれ!!
てんぼちゃんにやるよ」



「じゃ、じゃあ。貰います。」




そう言って両想い切符を受け取った



それから他愛のない話をして、いつものように時間を過ごしてると…

___ブー ブー ブー



先輩の携帯電話がなった。



画面に表示されてるのは、


笹崎 梨捺 calling



という文字だった。


でも、一向に先輩は出ない。



「先輩…出なくていいんですか??」



「あぁ。」



「ほんとに…???」




「うん。この電話には出ないよ。」



先輩はそういった



しばらくしてから、梨捺先輩からLINEの通知が見えた






『梨捺 : 遥人…私振られちゃった。やっぱダメだね、、他の人のものとっちゃったら。
私、どうしよう。』



他の人のもの…。



今回は電車でもあまり吉岡先輩と彼氏さんの話してなかったし…。




先輩の大会の次の次の日から完全に様子がおかしかった。


2人とも元気がなくて…。



それって…。


浮気だったってこと…??



しばらくしてまたLINEの通知が来た。




『梨捺 : ねぇ。遥人。
ステーションホテルの10*3号室。
来てほしい…。』





吉岡先輩はそれを見て携帯の画面を伏せた



「見えちゃった???
ったく。こいつ、幼なじみなんだよ~

ほんと、何を言ってんだかなぁ」



そんな風に先輩は笑ってるけど、顔、引きつってるよ…







「先輩…。

自分に嘘、つかないでください。


梨捺先輩のこと…好き…ですよね…」




「いや、別に俺はもうそんなんじゃ…」



「もういいです!!!
分かってました!最初から…。


今、梨捺先輩には吉岡先輩しかいないんじゃないんですか…。

行ってあげてください。吉岡先輩。


私はいいですから!!」




私はさっき貰って財布に大事にしまったはずの両想い切符を先輩に渡した



「ほら。70%です。
今までの先輩の想い、きっと伝わる。


行ってください。先輩…。」



本当は行って欲しくなんてない。

だけど、私のせいで先輩を後悔させるなんてもっとやだ。



私は先輩の少しの気持ちに賭けた。



だけど……



「てんぼちゃん…








……………ごめん。」




先輩は私の横からスッと立ち上がって走り始めた。




あぁ。あっけなく負けちゃった。



そりゃそうだよ。



ずっと。ずっと私は先輩の何を見てきたんだろう。






先輩の視線ははいつも梨捺先輩で、


梨捺先輩を見る時にはとっても愛しい顔してたじゃん。




そんな状況で…梨捺先輩が傷ついて来て欲しいなんて言ったら、行かないわけないじゃん。



何を期待してたの……。



バカみたい。



浴衣まで着て…髪型まで練習して。


せっかく貰った先輩からの両想い切符。


先輩の両想いのために渡しちゃうなんて。



私は本物のバカだ…。



私の頬を涙が伝うと同時に…



バーーーーン



と、切なく花火が上がった。