両想い切符〜ふた駅先の片想い〜




先輩と顔見知りになって、朝の挨拶をするようになってから2週間。


期末テストに向けて私は図書館で勉強している。






相変わらず、吉岡先輩の隣には梨捺先輩がいて、私は電車の中であのお決まりの挨拶をするだけ。



変わったことといえば、梨捺先輩の彼氏くらい。



はぁ~。次はいつ先輩とお話できるかなぁ



今日ずっと1人でまたモヤモヤしていると、



「未緒!
あんたから行かないと、先輩からは来てくれないんだからね!?

そこ、ちゃんと分かってる!!?」



なんて、舞衣に言われてしまった



そうだよね。



吉岡先輩が好きなのは梨捺先輩だし。



私のことなんて、名前さえも知らないただの後輩。




私からいかなきゃいけないんだけど…



どうやって…。








朝話しかけるなんて無理だし…



学校で会っても、吉岡先輩の周りにはたくさんの男友達がいるし。



帰りは部活の時間次第だから、何時になるのか分からない。



でも実は今日は少し期待してる…



図書館の閉館時間は22時。



だから、乗る電車はこの前先輩と会った時と同じ!!



今日会えるかなぁ



ま、会えたところで話せるかどうかは別問題なんだけど。



うだうだ考えてると、時間が経つのは早くって、もう閉館時間になった




ふぅ〜。先輩が居ますように。



先輩がもしいたら、話しかけれますように。







そう思いながら図書館からの帰り道を歩く。



通り道の学校を見ると、テニスコートのナイター……消えてる。



練習、結構前に終わったのかな…。



まぁ、そんな簡単に居ないか。




そう思いながら駅に着いた


うん。やっぱりいない。テストも近いしね…


まぁ大会も近いけど…



相変わらず誰もいないホームのベンチに座った


電車が来るまであと3分。


まぁまぁいい感じのペースで図書館から歩いてこれたなぁ~



テストまで続けよっかな。

今回のテストは、先輩が部活頑張ってるぶん、私も頑張りたい!!



まぁだからといって、別に先輩と仲良くなれるわけじゃないけど…


気持ち的に…ね??







そんなこと考えてぼーっとしてると




「あれ??


……てんぼちゃん??」




なんて澄んだ声が聞こえた



あぁ、ダメだ。会いたすぎて空耳が聞こえる



「おーい!?おい!」



声はだんだん近くなってふと横を見ると、先輩の顔があった




「ぅ、うわぁっ!!!」



「おい、なかなか気がつかないと思ったら!
気がついた瞬間、バケモノ扱いすんな!」




「い、いえ!!すみません。
まさかほんとにいると思わなくって…」




「はぁー?!意味不明だし

やっぱ最高に面白いわ」



そう言って先輩は笑った






「てんぼちゃん、今日なんでこんな遅いの?」



しばらく笑っていた先輩が話を振ってくれた



「あ、えっと!
図書館で勉強してて……テスト近いから。」



「え、まじで!?
ちょーえらい!!すごいじゃん!」



先輩こそ、テストいっつも1位じゃん。


って思ったけど、先輩の褒め方は全然嫌味に感じなくて、ちょっと嬉しかった



「全然ですよ…私容量悪いし。
数学なんて、ほんと、ぜんっぜんできなくて!!」



私がそう言うと



「分かんないとこ、どこ??
問題あるなら教えよっか??」








………はぁ!!!?


え、ムリムリムリムリ!!
そんなのめちゃくちゃ迷惑かけちゃう!



「いえいえいえ!!
いいです!!だ、大丈夫です!!」



「えー、遠慮しなくていいのに。」



「そんなそんな!部活で疲れてるところ悪いですって!」



ほんと、先輩は放課後から今までずっとテニスして体動かして疲れてるんだから…。




「やっぱ、てんぼちゃん、面白いな。ほんといい子」



『いい子』ですって!!?




先輩が私にそんな言葉をくれるなんて…




私今すぐ空飛べそう……♡







そんなことを思ってるところで電車が来た



あ〜電車、今来ちゃったか…


もうちょっと話してたかったのにな。


電車乗っちゃったらさすがに別々に座るよね。



私は先輩と話してたいけど、先輩からすれば、そこまで仲良くもないただの後輩と、30分も話すの疲れるもん。




そう思いながら私は先輩が座った席とは反対側のさらに離れた席に座った




すると、先輩は驚いた顔をして私の方に来た




「なんでそっち座んの??」



「だって!疲れてるところ、わざわざ相手していただくなんておこがましいので!!!」



「おこがましいって


ったく!俺がてんぼちゃんの定位置の横に座った意味ねーじゃん!

疲れてるけど、てんぼちゃんと話してたら楽しいから全然、苦じゃねーんだけど?俺は。



てんぼちゃんはいや??」



「い、い、嫌なわけないじゃないですか!!

む、むしろ!私は話してたい……っていうか

い、いや別に!全然そーゆう意味じゃないですけど、、その…」



私がごもごも言っているとまた先輩に笑われた


もー!!!先輩が変な事言うから嬉しすぎてつい、思ってること言っちゃったじゃん!!




「じゃーきまり!
ほら、ココ!!てんぼちゃんはこーこ!」



私があだうだ考えてる間に先輩はもといた場所に座っていて、


私の定位置にポンポンっと手を置いた



先輩に言われるままそこに座ると、先輩はニッと白い歯を見せて笑った






「吉岡先輩って変な人ですね」



「おー、それよく言われる

まぁーけど、てんぼちゃんには言われたくないけどね?」



「な!なんでですか!!」



「自覚ないところもさらにやばいよね」



なんて、また先輩は大きく笑った


よく笑う人だなぁ~



「もー!」



そう言って私が頬を膨らますと、


先輩は人差し指で私の頬をつんとつついた



ぷーっ


と空気が抜けたせいで、恥ずかしすぎて、私の顔は真っ赤になった



それを見て先輩は「真っ赤じゃん」なんて言ってまた笑う




正直ちょっとムカつくけど、この笑顔が見られるならこれもこれで悪くないか?

なんて思っちゃう。



恋ってなんでも許せちゃうところが厄介…