両想い切符〜ふた駅先の片想い〜




すごい勢いで私に質問攻めする舞衣とそれに伴ってる不機嫌さを増す智弘。



あぁぁあ〜もう!!
私は朝から疲れてるのにぃ!!!



でも、舞衣の一言から空気は逆転した


「で?
どんなLINEしてるの??♡」




………ん??



「ん?え?

どんなLINEしてるの?てか、吉岡先輩のアイコンとかめっちゃ気になるんだけど!
見せてよ!!」




「えーっと。あの…LINE知らない。」




「はぁ!!?」



「え、だから、LINE知らないよ??」



私がそう言った瞬間、智弘が吹き出した



え、え??なにがそんなにおかしいの!?



「ほら、言わんこっちゃない
こいつは、そんなもんなんだって

あーおもしろ」






「未緒……

先輩と1時間話して間に連絡先ぐらい聞けたでしょ??」




「うーん。そんな発想、思いつかなくて…」




「1時間話せた〜♡って、それ、次にほとんど繋がらないじゃない!!」



……確かに。

どうしよう!私、先輩と話せたことと、朝手を振ってくれただけで、満足しちゃってた!




「はぁ〜〜。あんたの脳みそは中学生か!!
今どき中学生でもその状況だと連絡先ぐらい聞くわよ!?」



うぇぇぇーーー!!!

そーなの!?私の恋愛レベル、小学生以下!?



舞衣が信じられないって呆れた表情をして、
私がショックを受けた表情をしていても、

智弘はずっと隣でそれを見て笑ってる






「さすが未緒!!
お前のピュアさには関心するわ」



智弘は私を面白がっておでこをツンツンしてくる



もぉ〜!!いいじゃん!私が幸せだったんだから!!!



「はぁ〜。じゃあ、1時間も吉岡先輩と何話してたの??」



「部活の話とか〜。青春の話とか〜。
あとは…」



あと、何話したんだっけ??


そう言えば、先輩の大切な情報なんて、何も得られなかったし…


まして、私なんて!『てんぼちゃん』ってニックネームに満足して名前さえ言ってなくない!!?








………これは終わった。



きっとまた、朝だけ挨拶して、


しばらく経つと、何も無かったかのように消えてしまうやつだ。



「まぁー、いんじゃね??

どうせ期待もたされたところで、あいつの好きなやつはどうせあの、あざとそうな笹崎ってやつだろ??

傷つけられる前に済んだんだからよしとしよーぜ??」




「ちぃ!!あんたは黙ってなさい!

未緒。チャンスを逃してはいるけど…まだこぼれ球があるはずよ!!

せっかく顔見知りにまでなれたんだから、頑張るのよ!!」



ん〜。だけど、智弘が言ってることは大当たりかもしれない。



私は仲良くなればなるほど、もっと吉岡先輩と一緒にいたくなっちゃうかもしれないし…


でも、吉岡先輩は梨捺先輩だし。。。




私がなんて言えばいいか分からずゴモゴモしていると、舞衣に両肩をパンっと叩かれた








「未緒〜!ちぃの言ってること気にしてるなら間違ってるわよ!!?



先輩だって、人間なの!男なの!!

梨捺先輩のことで弱り続けてるんだから、きっと入るスキはどこかにあるんだから!


それに!未緒は確かに梨捺先輩とはタイプ全然違うけど、可愛いんだから自信持ちなさい!」




なんて、舞衣からよく分からない励ましを受け…




私の忙しい朝はあっという間に過ぎた









それからも、廊下や階段で、先輩に会わないかなぁなんて期待していたけど、



結局会えずじまいで放課後になった



帰宅部の私は、授業が終わればすぐに帰るし、テニス部はきっと、今日も夜遅くまで練習なんだろうなぁ




昨日、吉岡先輩はテニスについて熱く語ってた



次の夏の大会が勝負なんだって。
それに負けると、もう引退。きっと、先輩の3年間がかかった大会なんだ。



夏休みを間近に控えた今だからこそ、体調に気をつけて頑張ってほしい!!




放課後校舎からテニスコートを見ながらそんなことを思った







先輩と顔見知りになって、朝の挨拶をするようになってから2週間。


期末テストに向けて私は図書館で勉強している。






相変わらず、吉岡先輩の隣には梨捺先輩がいて、私は電車の中であのお決まりの挨拶をするだけ。



変わったことといえば、梨捺先輩の彼氏くらい。



はぁ~。次はいつ先輩とお話できるかなぁ



今日ずっと1人でまたモヤモヤしていると、



「未緒!
あんたから行かないと、先輩からは来てくれないんだからね!?

そこ、ちゃんと分かってる!!?」



なんて、舞衣に言われてしまった



そうだよね。



吉岡先輩が好きなのは梨捺先輩だし。



私のことなんて、名前さえも知らないただの後輩。




私からいかなきゃいけないんだけど…



どうやって…。








朝話しかけるなんて無理だし…



学校で会っても、吉岡先輩の周りにはたくさんの男友達がいるし。



帰りは部活の時間次第だから、何時になるのか分からない。



でも実は今日は少し期待してる…



図書館の閉館時間は22時。



だから、乗る電車はこの前先輩と会った時と同じ!!



今日会えるかなぁ



ま、会えたところで話せるかどうかは別問題なんだけど。



うだうだ考えてると、時間が経つのは早くって、もう閉館時間になった




ふぅ〜。先輩が居ますように。



先輩がもしいたら、話しかけれますように。







そう思いながら図書館からの帰り道を歩く。



通り道の学校を見ると、テニスコートのナイター……消えてる。



練習、結構前に終わったのかな…。



まぁ、そんな簡単に居ないか。




そう思いながら駅に着いた


うん。やっぱりいない。テストも近いしね…


まぁ大会も近いけど…



相変わらず誰もいないホームのベンチに座った


電車が来るまであと3分。


まぁまぁいい感じのペースで図書館から歩いてこれたなぁ~



テストまで続けよっかな。

今回のテストは、先輩が部活頑張ってるぶん、私も頑張りたい!!



まぁだからといって、別に先輩と仲良くなれるわけじゃないけど…


気持ち的に…ね??







そんなこと考えてぼーっとしてると




「あれ??


……てんぼちゃん??」




なんて澄んだ声が聞こえた



あぁ、ダメだ。会いたすぎて空耳が聞こえる



「おーい!?おい!」



声はだんだん近くなってふと横を見ると、先輩の顔があった




「ぅ、うわぁっ!!!」



「おい、なかなか気がつかないと思ったら!
気がついた瞬間、バケモノ扱いすんな!」




「い、いえ!!すみません。
まさかほんとにいると思わなくって…」




「はぁー?!意味不明だし

やっぱ最高に面白いわ」



そう言って先輩は笑った