。.。:+*未緒side。.。:+
__ガタンゴトン
いつもの朝。私は眠い目をこすりながら電車に揺られてる
私の視線の先にはいつもと変わらない風景
憧れの吉岡遥人(よしおか はると)先輩がいる
吉岡先輩はスラッとした長身に小さな顔。爽やかな黒髪。
顔はあんまり近くで見たことはないけど、遠くからでも分かる鼻筋の高さに、キュッとしている唇。
きっと誰が見てもイケメン。かっこいい。って言うんだろうなぁ〜〜
憧れの先輩に朝から会えてハッピー!なはずなんだけど……
その隣には美人な笹崎梨捺(ささざき りな)先輩がその女らしい色気とキラキラしたオーラを放ってる。
吉岡先輩が梨捺先輩に向ける表情は愛しさそのもので……
2人の間には1ミリも入る隙間なんてない
だけど、2人が話してる内容は吉岡先輩にとってはきっと傷つく内容。
「昨日翔太がね?これ、くれたんだけど、ちょっと重すぎない?」
そう言って見せるのはスラットした右手の長い薬指にはめられた指輪
「まぁ。お前はすぐフラフラするから、不安にもなるんじゃね?」
「別にフラフラしたくてフラフラしてるわけじゃないんだけどね。こーゆうことされると余計フラフラしたくもなるでしょ?
こんなものでしか繋ぎとめられない弱い男。」
「お前、ほんっと性格悪いよな」
「あら。小悪魔って言ってくれる?」
梨捺先輩は持ち前の美貌を使って男の人を操るのがうまい
綺麗な栗色の髪も。スラッと長い脚も。女性らしい膨らみを持った胸も。キュッと細いウエストも。
くりっとした瞳も。その上のすっと長い睫毛も。ぽってりした色気漂う唇も。
全部全部男の人を惹きつけるようにできてる
狙った獲物は自らから狩らせるように持って行くし、狩られてもずっと追わせ続ける
さっき梨捺先輩が自分で言っていたように『小悪魔』って言葉がちょうどいいような…
そう。『魅惑的』な女性。
吉岡先輩は何にもないように笑ってるけど…
なんか。複雑。
吉岡先輩、無理してるんじゃないかなぁ
学校の最寄駅になり、吉岡先輩と梨捺先輩が電車を降りる
私はいつも通りそのあとから降りて2人の背中を見ながら登校する
ときより梨捺先輩が吉岡先輩をつついたり、頭を撫でたり、ほっぺをつまんだり…
いわゆるボディタッチをよくしてる。
吉岡先輩はなんともない顔してるように見えて、耳は少し紅く染まるんだ
はぁ〜〜。いいなぁ。
私にもあんな美しさがあればあんなことも普通にできちゃうのかなぁ。
なんて思っていると、学校に着いた
「未緒〜〜!おはよ〜〜」
「舞衣〜〜」
舞衣は私の親友、茅ヶ崎 舞衣(ちがさき まい)
「またどーしたの?そんな浮かない顔して!
吉岡先輩??」
「うん……。」
「また梨捺先輩との絡みであんたが傷ついてんの??」
「だって……吉岡先輩のこと思ったらさ、どれだけ傷ついてるのかなって思っちゃうんだもん。」
小さい頃からきっと、吉岡先輩は梨捺先輩のことをずっと思ってきたはず。
そんな梨捺先輩があんなだと…ねぇ?
「また朝からしょーもねぇことで悩みやがって。
お前が悩んだところで、あいつには何にも届かねーし、お前が1人で傷つくだけだろーが」
ぐさっっ。。
横からもっともなことを言ってくるのは舞衣の幼なじみの香川 智弘(かがわ ちひろ)
「もぉー!またちぃはそんなことばっか言って!!」
「こいつがバカだから仕方ねーだろ」
「あんたってやつは!!そんなことでしか……
はぁ〜……そんなことばっか言ってると未緒に嫌われるわよ!!?」
「そんなの知らねーよ」
「知らねーよって!あんたのために私は!」
「あ?俺のためってなんだよ」
「だってあんたは…」
「ん〜〜ごめんなさい!!私が吉岡先輩のことで悩んだのが悪かった!!!」
私がそう言うとピタッと言い合いが止まった
喧嘩しはじめたら全然言い合いが止まらない幼なじみ2人。
仲良しっていうのはうらやましいけど、そこが難点なんだよね
しばらくの沈黙の後、
「……まぁ、そーゆうことだ。
あいつのことでもう悩むな。めんどくせー」
なんて智弘が言い残して先に教室へ上がった
「まったく。
ちぃはあんな言い方しかできないけど、ほんとはちゃんと、未緒のこと想っていってると思うよ?」
「そーだよね。
だけどちょっと直接的すぎて…ね?」
私だって分からないわけじゃない。
幼なじみの舞衣の親友だってことで私のことまでちゃんと、心配してくれてるんだ
「まぁーほんと。言い過ぎよね?!
あれでモテるんだからほんっとびっくりよ」
そう。智弘は吉岡先輩に負けないくらい女子からの支持率が圧倒的に高い。
まぁ確かに、顔はそんなに整うかってぐらい整ってるし、身長もこの前、178cmが来たって舞衣が言ってたし。
それにまぁ、あのズバッと言う性格は男らしくて人気らしい。
「まぁ、モテる理由。分からなくもないけどな」
「ほんと!?未緒、ちぃのこといいなって思うの???」
「う〜ん。私は……
吉岡先輩みたいな♡優しくって爽やかで、さらに一途なタイプが好き♡♡」
「あーはいはい。そうでした。そうでした。」
舞衣はさらっと流したけど…
吉岡先輩は私のタイプそのもの!
そんな吉岡先輩を見つけたのは、入学式。
✽.。.:入学式の日✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
可愛いってウワサの新しい制服に身を包んで、今までしてこなかった化粧も少しして。
春の暖かい空気に包まれて…
私は憧れの電車通学に心を躍らせた
大好きな少女漫画みたいな素敵な恋、できるかなぁ〜〜
ヒロインの相手役みたいな爽やかで優しくてかっこいい人……なんているわけないよね。
理想と現実は全然違うし…。
それになんてったって、ここは田舎だ。
周りには田んぼ。川。山。
少し歩けば虫が顔に当たるし、電車なんて1時間に1本だし!!!
こんな垢抜けないところに、理想の王子様みたいな人がいるわけ………
ないのに。
私の二駅先で乗って来た同じ学校の制服を着た2人は、キラキラのオーラを放っていた