両想い切符〜ふた駅先の片想い〜




「先輩...なんで先輩はそんなにいっつもずるいんですか。


私がさっき泣いてたのは先輩のせいです…」



私がそういうと先輩は少し驚いた表情になった


でも、涙とともにダムが決壊したように私の気持ちも溢れだした




「私、久しぶりにこの時間帯の電車待ってて思い出したんです。

先輩と帰ったり、お話したり、楽しかったなぁって。


先輩、今どこで誰と居て、何してるんだろうって…ほんとはずっと考えてた…。



私...ほんとはずっと.......」



_______ぎゅっ



私が言いかけると先輩は私を強く抱きしめた



「先輩.....ずるいです。先輩。


私ほんとは...ほんとはずっと。


先輩に会いたかった。

先輩と話したかった。」









私がそう言い終わって先輩の胸で泣いていると、先輩がすっと私の両肩に手を当てて私の顔を覗き込んだ



そして、左手で私のほっぺたを撫でながらじっと私の顔を見てくれた




「てんぼちゃん...

そんなこと言われたら、俺、期待するよ?


.....期待してもいいの??」



「...え?」



「香川とは?
付き合ってるんじゃないの??」




.....ん???智弘???


先輩が少し不安そうな表情を浮かべている。



「ん?智弘とはそんなんじゃないですよ?」



唐突にでた智弘の名前に驚いて涙も止まってしまった



私が不思議そうにそういうと先輩はなんだよ~と言いながら自分の頭の後ろをかいた



「へ??なんの話ですか...?」


私がそう聞くと少し嬉しそうになんでねぇよと言いながら私の両頬を先輩のあたたかい手で包んだ






「なぁんだ。

じゃあ、俺が遠慮する必要もなかったってことじゃん。」




そう言って私の頬に降ってきたのは先輩のあたたかい唇だった


「せ、先輩...????!」



「ごめん、香川と付き合ってるもんだと勝手に思ってた

なんだよ。よかった。まだ間に合ったか...」




なんて先輩は言ってるけど私はさっきの先輩からのキスで頭がいっぱいいっぱいで混乱中...



「ふふっ
なんつー顔してんの???さすがてんぼちゃんだな!」



そう言って爽やかに笑う先輩にもずっとドキドキしながら何が何だかわからなくなっていた










「じゃ、そろそろ姫は帰らなきゃな?」



なんておどけて先輩が言ってそのまま私の手を引いて駅に向かった



「てんぼちゃん、さっきから何でそんなとぼけ顔なの???」



なんて、嬉しそうにゆう先輩はもう確信犯だ



そうこうしてるうちに、もう私が帰る電車がやってきた



「さ、終電だぞ?寝過ごすなよ??
ま、そのとぼけ具合じゃ寝れないか?」



なんて笑いながら私の頭をポンポンとする。




「じゃ、てんぼちゃん、約束。

明日から図書室で勉強してる俺を応援して、22時代の電車に乗って俺と帰ること。」



そう言って先輩は小指を出した



「ほら、約束。絶対破るなよ???」


「はい...」



そう言って、私たちは指切りげんまんをした



帰りの電車に揺られながら私はこれは夢ではないのかとほっぺたをつねっては疑ってを繰り返した。







次の日、放課後。



私のクラスがやけにザワザワしていると思えば「てんぼちゃん!」
なんて大きな声で呼ぶ吉岡先輩が入口に立ってた




はっ!!?

なんでこんなところに吉岡先輩?!!



昨日の今日で頭の整理が出来ていない私は真衣にもまだ昨日のことは話せてなくて...



と、思って真衣を見ると


あんたどうしたの!!?なんで!!?


なんて感情がストレートに伝わってくる表情をしていた




後ろにいた智弘はちょっと不機嫌そうに


「なんだよ。王子が迎えにきやがったけど?」



なんて私に声をかける。



私が荷物を急いでまとめて先輩の方へ行くと



「そんなにあわてなくていいのに。
相変わらずだな」


なんて笑いながら私の頭をポンポンする先輩



それと同時に周りの女子から「きゃーー」という黄色い声が聞こえた








「ちょっと!未緒!!?」


後ろから真衣の声が聞こえたけど、吉岡先輩が私の背中に手を回して歩くから振り返れず...



ごめん。真衣。明日絶対話すから...!!!



なんて思いながら私は先輩に図書館へ連行された



「はい、てんぼちゃんはここ。」



指定されたのはもちろん先輩の隣の席。



えーっと。先輩...これじゃ逆に勉強の邪魔なんじゃ...???



「なんか色々言いたそうだけど、ここから離れるの禁止な??」



「っひょへ??!」



私が思わずそんな声を出してしまうと先輩はまた大爆笑していた



「ここ図書館なのに笑わせるなって
なにひょへ!!?って
だって、てんぼちゃん、いつどこに行くか分かんねぇから勉強に集中出来ない!


とりあえず、隣にいてくれたら寝てもいいから!な???」



そんな優しい笑顔で言われても...

とは思いながらもこのちょっと甘えっぽい先輩がとても愛しくて私はにっこり頷くしかなかった










最初は私も先輩と一緒に勉強してたんだけど...


だんだん睡魔が襲ってきて、、、


私はそのままご就寝。



先輩に肩を叩かれるまで起きないという...

何たる失態.......。




「今日はてんぼちゃんがいたから勉強はかどったわ」



そんなこと言いながら笑う先輩はずるい。



そしてそのまま、何も言わなくともお互い手を握って駅まで歩く。



なんて幸せな時間なんだろう...。



そういえば、先輩ってどこの大学うけるんだろう。




少なくともこの辺に大学はないから確実に離れ離れだ。



しかも先輩が学校に来るのもあと4ヶ月程だし、そのうちの2月からはもう自由登校で会えなくなっちゃうんだ...。








そっかぁ。先輩と会えなくなっちゃうんだ。


私たちは不思議な関係でそんな簡単に会いたいなんて言えるような関係じゃないし。



でもこれは一体どーゆう関係だと思えばいいのかなぁ??



私も先輩も告白してないし...。


ということは別に付き合っているということでもなさそうだし...。




こんな関係で先輩が遠く行っちゃったら寂しいなんて言えないよね...。


重い勘違い女には絶対なりたくない!!




「てんぼちゃん?
さっきから元気なくない?」



「っえ?!そ、そうかな???
寝起きだからちょっと大人しいのかも?!」



そういうと先輩は笑って、


「気持ちよさそうに寝てたもんな~」



なんて嬉しそうな顔で言う。



先輩...。私こそ期待してもいいんですか??






そこからセンター試験のある1月まで、ぶっ通しで先輩は勉強に励んだ。




私もなにかできないかと土曜日日曜日にはお弁当を作って図書館に先輩と一緒にこもり、



平日には隣でグーグー寝ることがないように自分のお気に入りの本を探して絶対に起きることにした




クリスマスなんて忘れてるうちにスっと過ぎて、お正月は私が必死で合格祈願をするというちょっと意味不明な感じになってた。




頭がとてもいい先輩を見ていると、やっぱりここから結構遠い都会の大学に行ってしまうんじゃないかなぁなんて思ってしまう。




なんか矛盾だなぁ。



先輩の試験が上手くいってほしいけど、実際離れてしまうのはすごくいや。