両想い切符〜ふた駅先の片想い〜




入学式が終わってから、HRで2人の正体はすぐに分かった



2人とも私たちの2つ上の3年生で


吉岡先輩はテニス部のキャプテンで学校中の王子様だし、



梨捺先輩は小悪魔系女子だけど、憎めないと評判らしい。




2人は幼なじみで、いつも一緒にいるって…




梨捺先輩は男を取っ替え引っ替えしてるけど、絶対に吉岡先輩には手を出さないんだって




それは、幼なじみだからだってみんな言ってるけど…




本当は吉岡先輩の気持ちに気がついてるからじゃないのかな…??



そこらへんは謎だけど、彼女自体がミステリアスで色んな男の人が手のひらで回されてるって話。




だけど人のものは絶対に取らないし、女の味方みたいな人なんだって…。



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「ちょっと!!未緒!?


何物思いにふけってんの!!!
授業、遅れちゃうわよ!!!!!」



あっ!入学式の日のこと、思い出してぼーっとしてた!




舞衣に右手を引っ張られながら私たちは階段をもうダッシュした



あれからもう3ヶ月も経っちゃったんだ…



私はなーんにも、できないまま。
名前さえも、いや、顔さえも覚えてもらえないままなんだろうなぁ〜〜。




「もーまったく!!
いつまで吉岡先輩のこと考えてんの〜!!」




教室に着いてからもそんな風に舞衣に怒鳴られながら両ほっぺを挟まれた




「ちょっと〜〜いひゃい!!
みょ〜〜!!やい!!!?」
(ちょっと〜〜いたい!!
も〜〜!!まい!!!?)



私がそう言うと舞衣はお腹を抱えて笑った







「はぁあ〜〜ほんっと未緒面白すぎ!!


今日の放課後の買い物のこと、ちゃんと覚えてるんでしょうね〜〜」



「もー!そのくらい私だって覚えてるもん!
楽しみすぎて、お金お母さんからいーっぱい貰って来ちゃった♡」




「えぇ〜〜いいなぁぁ!!
私にクレープかアイス、奢ってー♡」



「おっけ〜〜!
ガリガリ君奢ってあげる〜〜」



「あんたそれ!!ワンコインじゃない!!」




「へへへ〜〜ばれた?♡」



「あんたねぇ〜〜!!!」




そう言って舞衣は私をくすぐる



今は彼氏なんていなくたって、私には舞衣がいて、その隣に智弘がいて、



毎日笑って楽しく過ごしてる



十分、幸せな毎日!!



今日だって放課後には舞衣とここら辺に1つしかない、デートといえばあそこしかないショッピングモールに放課後デートなんだ♡








早く放課後になれって思い続けて1日中


やっと放課後です!!



「未緒〜〜!!行くわよ!」


「うん!!!」




私たちは吉岡先輩のテニスを少しみてから、
学校から一駅の大型ショッピングモールに出かけた




今日のお目当はお揃いのキーホルダー。



色んな雑貨屋さんを回って、その途中で色んな服を見ながら楽しんで




結局あっちもいい、こっちもいいなんて言いながら、決めたキーホルダーはうさぎの可愛いもの。




「なーんか、結局これ〜〜!?って感じなんだけど!!」



「んー確かに。まぁ、いいじゃん?
やっとお揃いのもの買えたんだし!!」



「それもそうか!まぁーいいや!」



そう言いながら2人でピザを食べて、また服のウィンドショッピングして…



そんなこんなしてるとすごく時間が経ってしまった







「やばぁ〜〜い!!!
もう、あと、終電の1本前の電車しかないじゃん!!!」



「え!ほんとだ!!」



そう。田舎すぎて終電の時間も23時12分と早く、次の私方向の電車は22時03分発で、
舞衣方向の電車は22時16分発のものしかなかった




「はぁぁ〜〜またお母さん怒られる〜〜」



「ほんと〜〜。田舎って電車の数ないからダメだよね〜〜」




2人でブツブツ田舎の文句言うのもいつも通りで、ああだこうだ言いながらも楽しく駅まで歩いた




私と舞衣のホームは反対側だからいつもみたいに線路を挟んでバイバイした




だいたいみんな、早く帰るか、終電で帰るか分かれるせいか、この時間帯は利用者がかなり少なくて、一両編成でやってくる




ま、私もこの時間の電車なんて、めったに乗らないんだけどね…




今日は貸切かなぁ〜〜




なんて考えて奥まで歩いてもう一度向こうのホームにいる舞衣に手を振った




「ばいばーーーい」


って大きな口で口パクしたら



「ばいばーーーい」



って返ってきた




電車が進み始めても見えないところまで手を振って、私はいつもの座席に座った










座った…………はいいけど




……………え!!!?



私の思考回路は完全に停止。




だってだって……貸切だと思ってた電車。


私のちょうど真ん前に、吉岡先輩がいた…






それも、彼は熟睡されてるみたいだ。




学校から先輩の駅までは6駅とはいえ、なんてったってここは田舎。



時間で言えば、30分〜40分かかる



先輩が寝る理由も分かるけど…



えーっと。これ、夢ですか…???




先輩の駅まであと5駅。




私はよくよくじーっと今のこの状況を考えた。




っていうか…。

こんな状況とはいえ、せっかく回ってきた先輩の顔をじっくり見るチャンス!だよねっ?


このままじーっと観察してようかな…











普段は絶対に見ることができない先輩の顔




こんなに鼻筋通ってたんだなぁ〜
こんなにまつ毛長かったんだなぁ〜
こんなに顔、整ってたんだなぁ〜



なんて、見れば見るほど遠い人のような気がして…。



今この時間が不思議でたまらなかった




そんなこんなしてると気がつけば先輩の最寄り、東条駅まであと一駅。




私ってば、どんだけ観察してんの!!!


早く起こさなきゃ……



って思うけど。どうやって起こそう…





私はない頭で必死に考えた





とりあえず、足元、つついてみよっか。



そう思って、私は私の足で先輩の足をつんっとつついた




先輩の足って大きいんだなぁ〜〜



なんて思っただけで、先輩はビクともしない








やっぱりダメか。



次は先輩になにか当ててみよっかな…



そう思って私がバックをあさりにあさって、
取り出したのはもう小さくなってしまった消しゴム



先輩に投げるのはどうかと思うけど……



しょうがないよね???



えいっ…




私のばっちりのコントロールで消しゴムは無事先輩のおでこに直撃!!!




だけど……起きない。




ウソでしょ?!

威力足んなかった??!




これがダメならじゃあ……

もう仕方ない。ここは先輩と私貸切だし、アラームの音!かけてみよう!!!




そう思って、私の携帯のアラームをかけた




___ピピッ ピピッ ピピッ




っうお、、割と音おっきい!!!




けど………起きん!!!!



って!この人、起きる気あるの〜〜??!




でもまぁ、もうすぐ大会だし、こんな時間まで練習してたなら、疲れるよね…







そんなこんなしてる間に



『次は東条駅〜〜東条駅〜〜
お出口は右側です』




なんてアナウンスが流れた




ええぇ。やばい。



どうやって起こそう。

もうこの際、やるしかない…。



そう思った私は、吉岡先輩の隣に移動した




『吉岡先輩』
そう言って体を揺するんだ!!頑張れ!!




ほら……今やるんだ!!



電車は先輩の駅で停車している。



ほら、早く!!!




………ガンバレ。私。



ガンバレ………。




勇気を振り絞って先輩の肩を揺すった




「……ん……ぅん…??」




先輩が眉を曲げて壁に預けていた体重を元に戻した




『扉が閉まります。ご注意下さい』



「っは!!」




先輩が眠そうな目をこすって起きると同時に電車はスッと動き始めた




………あぁぁ。
電車出ちゃったじゃん!!!



ってか……私はこんなとこにいちゃバレちゃう!!




先輩が完全に起きる前に移動しなきゃ!!!