周りの女子たちは、各学年のイケメンふたりが繰り広げたあの勝負にすごく湧いていた
2人ともかっこよかったなぁ~。
智弘…すごいよ。吉岡先輩とあんな競り合うなんて
走り終わったあとに悔しがる智弘に吉岡先輩が何か言ったあと、2人は握手をして笑いあってた
やっぱ男同志っていいなぁ。
そんなことを思った運動会だった
秋口になり、もう3年生は本格的な受験期に入る。
私は結局、先輩としっかり話もしないまま、あの時間帯の電車から足を遠ざけた
もう、忘れなきゃいけない。
吉岡先輩は梨捺先輩と幸せに過ごしててるはずだし…
そんなこと、私、先輩の口からなんて聞きたくない
先週終わった文化祭…
ミスコン3年連続優勝した梨捺先輩。
綺麗なドレスを身にまとった梨捺先輩に、花束とティアラを渡したのは吉岡先輩だったし…
ステージの上で見てあぁ、美男美女カップル…お似合い…
って思った。
すっかり吉岡先輩とは話せなくなった。
唯一どうしても一緒になってた登校の電車も…先輩ふたりの姿を見るのが辛くて、私はもう一本早い電車に乗ることにしてる。
今となっては数ヶ月前のあの先輩との時間が夢みたい。
こんなにも先輩のこと思っても…先輩はもう。梨捺先輩のものなのに。
私はモヤモヤ複雑な心を抱えたまま毎日を過ごしていた。
そんなぼんやりとした毎日を過ごしていると
「未緒ぉ~お願い~!!!
一緒に可愛い秋服買いに行こーよー!!
ねぇー未緒ぉ~~」
きっと落ち込んだ私に痺れを切らした真衣が買い物に誘ってくれた
「うん、、久しぶりにパーっと買い物しよっか!!!」
「そーこなくっちゃ!!」
放課後私たちはあのショッピングモールへ買い物に出かけた
店頭にならぶ可愛い服たちをみていると、なんとなく気持ちが晴れてすっかりこのごろ悩んでぼんやりしていた心を忘れてた
「これこの前ちょーほしかったやつ!」
「あーあの服売れちゃった~」
なんてずっと明るく買い物してる真衣。
その言葉から結構最近このショッピングモールに来たんだってことがわかる。
彼氏さんときっと来たんだよね。
なのに私を誘ってまた来てくれたんだよね。
親友の気遣いに心があったなくなって泣きそうになった
ちょっと疲れて休憩しようと入ったカフェで真衣と一緒にあたたかいココアを飲んだ
「真衣...ありがとね」
「ん?なにが~???」
「気遣わせたよね。ごめんね?」
私がそう言うと真衣はにっこり笑った
「未緒、最近ほんっと元気なかったから彼氏に相談したらなにか気晴らしになることしてみよう!ってなったの
ちょっとは気晴らしなったかな??」
「うん!かなり気持ちが晴れたよ??
ほんとにありがとね」
「ぜーんぜん?!私たち親友じゃない!」
そう言って明るく笑ってくれる真衣を見て、本当にこの子と一緒にいられて良かったと心から思った
「未緒~、これは私の独り言だと思ってくれてもいいから聞いてね?
私の考えなんだけど。
吉岡先輩のこと、無理に忘れようとなんてしなくていいんじゃないかな??
好きな人のこと忘れようなんて無理だよ。
それもいい思い出がたくさん詰まった人のことなんてさ...
梨捺先輩とどんな関係なのかなんて明確に分かったわけじゃないし。
それにもし、梨捺先輩と吉岡先輩が付き合ってたとしても、
未緒が今持ってる吉岡先輩の思い出だって、吉岡先輩への気持ちだって、
未緒だけの大切な気持ちや記憶でしょ??
いつかその気持ちが綺麗にしまわれるようになるまで無理に忘れなくていいと私は思ってる。
それに、まだそんな諦めモードになるなんてはやくない?!!
そんなにも諦めが悪くて忘れられない気持ちなのに、本人に伝えなくていいの???
このまま逃げたままじゃ前に進めない。
ちぃだって、未緒がそんな顔してたら誘うにも誘えないでしょ???
いつか未緒の気持ちが整理できて心が決まったら私は伝えるべきだと思うし、先輩としっかり話すべきだと思う。」
真衣の言葉はひとつひとつ私の心に響いた。
それと同時にこんなにも私のことを考えてくれてる真衣にとても熱い気持ちになった
「真衣...ありがと。
私、がんばってみようと思う。
いつかきっと先輩にこの思い伝えられるように。」
「うん。ほんと良かった。
未緒が真っ直ぐで前向きな気持ちになってくれて。」
そう言ってくれた真衣に微笑むと真衣もニッコリと微笑み返してくれた
「さ、もうこんな時間だ。
帰るか!!またママに怒られるぞ~」
そう言って笑い合いながら駅に向かった
駅につくといつの日か先輩と過ごしていたあの思い出の電車の時間になっていた
真衣は彼氏が車で駅まで迎えに来てくれるみたいで駅のロータリーでバイバイをした
私はひとり、静まり返ったホームで電車を待った。
今まで思い出さないようにしてた先輩との思い出が自然と蘇る...。
先輩の声。先輩の笑顔。先輩との挨拶。先輩との会話。
それから先輩の手のぬくもりや抱きしめられた時の感覚。幸せな気持ち。
切なかった夏祭り...最後の何通にも渡った先輩からのメール。
今まで逃げてたせいか私の胸の中でひとつひとつがぎゅっぎゅって...。
いつの間にか私の頬には涙が溢れた。
私、まだこんなにも先輩のこと好きなんだ。
まだこんなにも想ってるよ...先輩。
「てんぼちゃん.....???」
ふと顔を上げると心配そうに私を見下ろす彼
こんなタイミングで現れるなんて。
なんでそんなにもずるいの.....吉岡先輩。
「てんぼちゃん...
俺...ごめん。ずっと謝りたくて。」
「.......。」
私は先輩の悪そうな顔を見ながら何にも言葉が見つからなかった。
だって、会えてこんなにも嬉しい自分がいる
吉岡先輩.....私ずっと先輩に会いたかったよ...
そう思うとポロポロと涙がこぼれた
「てんぼちゃん...
なんで泣いてんの??つらいことあった?」
先輩の声が優しくて...。先輩の声があたたかくて。先輩のことが愛しくて...。
私は目の前の先輩にぎゅっと抱きついた。
「てんぼちゃん...???」
最初は驚いていた先輩もゆっくりと私の身体に腕を回してぎゅっと抱きしめてくれた
先輩のあたたかさが懐かしくて。
もう離れたくなくてもっと強く抱きしめた。