。.。:未緒side+:。.。:
はぁ~。
お昼の競技が着々と終わって、最後のトリ、下克上リレーの時間になった
女子から走って、女子はさすが3年生が優勝した
次は男子…
さっき智弘には『ちゃんと見とけよな』
なんて言われた
確かにすごく足の速くてなんでもできる吉岡先輩に勝ったらすごいけど…
心のどこかではなんとなく吉岡先輩が負けるとこみるのやだなって思ってる
男子が入場してきて、2走のバトンタッチゾーンに2人が並ぶ…
心なしかお互い少し睨み合ってるような…
『位置について
よーい…』
バンっとピストルがなって第1走者が走り始めた
僅差で3年生がリードしてる…
その後ろを2年生、1年生…と続いてる
あ、もう少しで吉岡先輩に…
バトンが吉岡先輩に渡った
うわ……速い…しかも
かっこいい~////
だけど、私の周りからも、向こう側の客席からも「きゃ~~」なんて黄色い声援が聞こえた
そちらを見ると、智弘が2年生の先輩を抜かした
それから徐々に吉岡先輩に距離を詰める
そして、吉岡先輩と並ぼうとしたとき、吉岡先輩のスピードがさらに上がった
結局2人は競り合ったまま第3走者にバトンが回った
周りの女子たちは、各学年のイケメンふたりが繰り広げたあの勝負にすごく湧いていた
2人ともかっこよかったなぁ~。
智弘…すごいよ。吉岡先輩とあんな競り合うなんて
走り終わったあとに悔しがる智弘に吉岡先輩が何か言ったあと、2人は握手をして笑いあってた
やっぱ男同志っていいなぁ。
そんなことを思った運動会だった
秋口になり、もう3年生は本格的な受験期に入る。
私は結局、先輩としっかり話もしないまま、あの時間帯の電車から足を遠ざけた
もう、忘れなきゃいけない。
吉岡先輩は梨捺先輩と幸せに過ごしててるはずだし…
そんなこと、私、先輩の口からなんて聞きたくない
先週終わった文化祭…
ミスコン3年連続優勝した梨捺先輩。
綺麗なドレスを身にまとった梨捺先輩に、花束とティアラを渡したのは吉岡先輩だったし…
ステージの上で見てあぁ、美男美女カップル…お似合い…
って思った。
すっかり吉岡先輩とは話せなくなった。
唯一どうしても一緒になってた登校の電車も…先輩ふたりの姿を見るのが辛くて、私はもう一本早い電車に乗ることにしてる。
今となっては数ヶ月前のあの先輩との時間が夢みたい。
こんなにも先輩のこと思っても…先輩はもう。梨捺先輩のものなのに。
私はモヤモヤ複雑な心を抱えたまま毎日を過ごしていた。
そんなぼんやりとした毎日を過ごしていると
「未緒ぉ~お願い~!!!
一緒に可愛い秋服買いに行こーよー!!
ねぇー未緒ぉ~~」
きっと落ち込んだ私に痺れを切らした真衣が買い物に誘ってくれた
「うん、、久しぶりにパーっと買い物しよっか!!!」
「そーこなくっちゃ!!」
放課後私たちはあのショッピングモールへ買い物に出かけた
店頭にならぶ可愛い服たちをみていると、なんとなく気持ちが晴れてすっかりこのごろ悩んでぼんやりしていた心を忘れてた
「これこの前ちょーほしかったやつ!」
「あーあの服売れちゃった~」
なんてずっと明るく買い物してる真衣。
その言葉から結構最近このショッピングモールに来たんだってことがわかる。
彼氏さんときっと来たんだよね。
なのに私を誘ってまた来てくれたんだよね。
親友の気遣いに心があったなくなって泣きそうになった
ちょっと疲れて休憩しようと入ったカフェで真衣と一緒にあたたかいココアを飲んだ
「真衣...ありがとね」
「ん?なにが~???」
「気遣わせたよね。ごめんね?」
私がそう言うと真衣はにっこり笑った
「未緒、最近ほんっと元気なかったから彼氏に相談したらなにか気晴らしになることしてみよう!ってなったの
ちょっとは気晴らしなったかな??」
「うん!かなり気持ちが晴れたよ??
ほんとにありがとね」
「ぜーんぜん?!私たち親友じゃない!」
そう言って明るく笑ってくれる真衣を見て、本当にこの子と一緒にいられて良かったと心から思った
「未緒~、これは私の独り言だと思ってくれてもいいから聞いてね?
私の考えなんだけど。
吉岡先輩のこと、無理に忘れようとなんてしなくていいんじゃないかな??
好きな人のこと忘れようなんて無理だよ。
それもいい思い出がたくさん詰まった人のことなんてさ...
梨捺先輩とどんな関係なのかなんて明確に分かったわけじゃないし。
それにもし、梨捺先輩と吉岡先輩が付き合ってたとしても、
未緒が今持ってる吉岡先輩の思い出だって、吉岡先輩への気持ちだって、
未緒だけの大切な気持ちや記憶でしょ??
いつかその気持ちが綺麗にしまわれるようになるまで無理に忘れなくていいと私は思ってる。
それに、まだそんな諦めモードになるなんてはやくない?!!
そんなにも諦めが悪くて忘れられない気持ちなのに、本人に伝えなくていいの???
このまま逃げたままじゃ前に進めない。
ちぃだって、未緒がそんな顔してたら誘うにも誘えないでしょ???
いつか未緒の気持ちが整理できて心が決まったら私は伝えるべきだと思うし、先輩としっかり話すべきだと思う。」
真衣の言葉はひとつひとつ私の心に響いた。
それと同時にこんなにも私のことを考えてくれてる真衣にとても熱い気持ちになった
「真衣...ありがと。
私、がんばってみようと思う。
いつかきっと先輩にこの思い伝えられるように。」
「うん。ほんと良かった。
未緒が真っ直ぐで前向きな気持ちになってくれて。」
そう言ってくれた真衣に微笑むと真衣もニッコリと微笑み返してくれた
「さ、もうこんな時間だ。
帰るか!!またママに怒られるぞ~」
そう言って笑い合いながら駅に向かった
駅につくといつの日か先輩と過ごしていたあの思い出の電車の時間になっていた
真衣は彼氏が車で駅まで迎えに来てくれるみたいで駅のロータリーでバイバイをした
私はひとり、静まり返ったホームで電車を待った。
今まで思い出さないようにしてた先輩との思い出が自然と蘇る...。
先輩の声。先輩の笑顔。先輩との挨拶。先輩との会話。
それから先輩の手のぬくもりや抱きしめられた時の感覚。幸せな気持ち。
切なかった夏祭り...最後の何通にも渡った先輩からのメール。
今まで逃げてたせいか私の胸の中でひとつひとつがぎゅっぎゅって...。
いつの間にか私の頬には涙が溢れた。
私、まだこんなにも先輩のこと好きなんだ。
まだこんなにも想ってるよ...先輩。