「すみません、お客様。ナンパは困ります。」
いつの間にか店内から出てきていたご主人様が、ボクから男性を遠ざけてくれた。
その顔は笑顔ながらも額には大きな怒りマークがついている。
「ご、ご主人様…っ!」
…かっこいい!
なんだかご主人様、王子様みたいだ…!
「なんだよ。あんたらそーいう仲?きもっ」
男性はそう言い残して、人混みの中へ紛れていった。
ご主人様の額に浮かぶ汗マーク。
引き攣り笑顔でこちらを振り替えったかと思うと、ボクの手を掴んだ。
「やっぱりダメだ、そんな格好。変なの寄ってくる。店長に言って俺のバイトが終わるまでお前は裏で待たせてもらおう。」
「も…もんげ〜」
「あれ…、ていうかお前…手が熱くないか?」
ご主人様がボクの額に手を翳す。
その距離に、その真剣な眼差しに、ボクの体が熱くなる。
「熱っ…!」
ボクの熱にビックリしたご主人様は飛び退いて言った。
「お前、すごい熱…。帰るぞ。」
「え、でもお給料が…」
「そんなもんいらん。店長に事情説明して早退させてもらう。」