晴登くんは、とても不思議な男の子。

神社の跡取りであることから皆に一目を置かれる存在でありながら、誰にでも優しく思いやりがあり、同じ歳とは思えないほど落ち着いていて、一緒にいると何故だか温かい気持ちになれる。

だけど、悪戯なところもあって、そんな時は子供みたいに無邪気な笑顔を浮かている。今だってそうだ。

再び自転車の後ろに乗せて貰った私は風の音に耳を澄ませながら、彼のことをもっと知りたいと思った。



「じゃぁ、また明日な」

「うん、今日はありがとう」



おばぁちゃん家の近くまで送ってくれた晴登くんに手を振った私は、彼の姿が見えなくなるまで見送った。

それから、バッグの中に入れてある例の日記を取り出す。

ここに書かれている内容と今現在がリンクしているかもしれないことに気が付いてからは、出来るだけ先を見ず、お守り代わりとして持ち歩いている。

今日の日付けは、8月8日。

栞を挟んでいるページから1つ捲って、そこに書かれていたのは、淡く湧き上がる気持ちに戸惑う言葉だった。



【8月8日 晴れ 彼のことをもっと知りたい】


海辺の灯台があるところまで向かった。

自転車に2人で乗った。

夕日に照らされた彼の横顔が綺麗で胸がドキドキした。

だけど、それと同時に切なくもなった。

時折、見せる彼の寂し気な表情がとても切なくて。

私にできることがあるのだろうか。