晴登くんはそう言って笑ってくれるけど、無神経な質問をぶつけてしまった私は自己嫌悪もあってシュンとしてしまう。

どんどん沈んでいく夕日と、長く伸びる2つの影。

変わらずギコギコ鳴る音を聞いていると、ふいに晴登くんは自転車に跨り、そのまま走って行ってしまった。置いてきぼりをくらう私。


「……え?」

「芙海―――! 走れ!」



15メートルほど先で足を止め、こちらを振り返り叫けぶ晴登くん。

私は呆然とその姿を見つめる。


「早ぅせんと、日が暮れんぞ! 暗くなったらここらはお化けが出るぞ」

「え!? おばけ!? やだやだ待ってよ」

「あ、芙海の後ろに! ほら!」

「やだー!」



オカルトの類はすべて丸ごと苦手だと言っているのに、晴登くんは笑い声をあげて再び私を置いて走って行ってしまう。

酷いよ、待ってよ、と叫びながら陸上選手も驚きの速さで走れた私は、彼に追いつき自転車の荷台を掴んだ。


「意地悪しないでよ、晴登くん」

「っふ、ふははは」

「ちょっと何笑ってるのー」

「だって、すっげぇ形相で走ってくるけぇ、お化けの方が怖がるわ」



こーんな顔って、晴登くんが変顔をして再現してくれる。

それに私は「ひどい」「最低」と言い返していたけど、最終的に笑ってしまった。