絢子さんも、私たちにたくさんのお土産を持たせてくれた。

お礼を言って玄関へ向かう間にも、麻子さんの他人行儀な声掛けが続いている。

「私のことをヘルパーさんだと思ってるんよ」そう言った絢子さんの顔はとても悲しそうで、胸がぎゅっと痛い。

忘れ物がないか身の回りの確認をしている私の隣で、先に靴を履いた晴登くんが絢子さんに向けて口を開いた。


「麻子さんは絢子さんにとっても感謝してると思います」

「え?」

「手を叩いて喜ぶのは俺らが来て嬉しかったんじゃのぉーて、絢子さんが傍にいてくれるから嬉しいやって、そう思います」

「そぉ、そぉね……ありがとう」




飯島宅からの帰りは長い登坂が続くため、晴登くんは自転車を押して歩く。下りは軽快に走っていた自転車も、今はギコギコ鈍い音を立てるだけ。

晴登くん隣を歩く私は麻子さんの箱を胸に抱き抱え、さっきのことを考えていた。


「ねぇ、さっきの……晴登くんは麻子さんのオーラが見えたの?」

「うん、ぼんやりとやけどな」

「何色だった?」

「それを聞かれると答えるのに困るけど、薄いピンクとかオレンジとかそんな感じの温かい色やったな、オーラってのは1色やないで」


そう答える晴登くんの横顔は、夕日に照らされ赤やオレンジ色に染まっている。

麻子さんのオーラもこんな色だったのかな。