螢side

教室へ戻るとだれもこちらへ寄ってこない。
それだけじゃない。立ち歩いている人さえもいないのだ。
だけど、僕達が入ってくるなりコソコソと話し出す人はいた。
「哀川さん、席につこう。」
「うん…。」
哀川さんは理駆先輩から言われたことを気にしているのかずっと俯きながら何かを考えているようだ。

「あ、あの!」
急に声をかけられる。
「今までごめんなさい!」
「えっ!ど、どうしたんですか!?」
クラスメイトが自分から哀川さんに声をかけている子なんて見たことがなかったから、僕も驚く。
哀川さんはどうしたらいいのか分からず慌てている。
「今まで落書きとかに気づいてたのに止めなくて、謝って済む問題じゃないけど………。本当にごめんなさい!!」
「え……。」
こんなことなんて初めてなのだろう、哀川さんは僕の顔を見たり、そのクラスメイトの顔を見たり………。
「はぁ……。哀川さん、ここはね……。」
そっ、と対応の仕方を哀川さんに教える。
まぁ、これが最善なのかわからないけど、何も言わないよりはましだろう。