「あ、緋山君!ありがとう!」
「別にいいから、さっさと帰るよ。」
「う、うん!先輩、お疲れ様でした!」
「お疲れー。」
哀川さんを連れて家へ向かう。
やっぱり微妙に濡れるし、どんどん雨がひどくなってきた。
「夏だね。」
「僕、雨嫌い。」
濡れるし、寒いし、ジメジメするし……。
「私は好きだよ、雨。」

______________全部洗い流してくれるから。

そういった時の哀川さんの横顔は少し悲しそうだった。
洗い流すとは何を洗い流すことなんだろう。
すると、哀川さんが急に立ち止まる。
「緋山君!」
「……急に何。」
「私達って、友達?」
「え?」
急に何を言い出すんだろうか。
友達って、みんなで遊ぶとかそういうのだよね。僕は友達という友達には出会ったことないから友達の概念がよく分からないけど……。
「友達、なんじゃない。」
哀川さんのことはなんとなく友達なんじゃないかって思える。
よそから見たらただのルームメイトかもしれないけど。
「そっか!良かったぁ、違うって言われたらショックだったな。」
再び雨の中をすごく嬉しそうに歩いていく哀川さん。
何がそんなに嬉しいんだろう。
「ねぇ、僕と友達になれてそんなに嬉しい?」
「うん!凄く嬉しいよ!」
僕の方を見て、また幸せそうに笑う。
やっぱり哀川さんは分からない。


哀川さんの笑った顔で嬉しくなる僕の気持ちも分からない。