そして、澄が帰ってから数分後、天気予報の通り激しい雨が降ってきた。
「あ………。」
机にあった携帯から音楽が流れる。
「哀川さん?」
連絡をしてきたのは哀川さん。
何なんだろう。傘を忘れたとかはないはずだし………。

「もしもし。」
『ひ、緋山君。寝てた?ごめんね。』
「いや、寝てないから。」
『そっか。あの、さ………傘、持ってきてもらってもいいかな?』
「え、持ってったでしょ。」
『貸しちゃった。』
「はぁ、何やってるの。」
『急いでたみたいだから……。』
自分のことを考えずに行動するのはいいことなのか悪いことなのか。
外を見る。
雨は止みそうにない。
だけど、これ以上激しくなると天気予報では言っていたはず。
こんなことしてる時間が無駄か……。

「はぁ……。分かった。今どこ?」
『学校の近くにある喫茶店。ごめんね、迷惑ばかりかけちゃって……。』
「別にいいから。そこ動かないでね。」
『うん。ありがとう。』
通話を切る。
哀川さんには澄が言ってたことを話せない。
だけどいつかはバレること。
まぁ、その時は面倒ごとにならないように最善の努力をしよう。

哀川さんは、怒るかな。

それを知って隠していた僕に対して。
それを隠していた弓景先輩に対して。
哀川さんが怒るようなところは想像出来ないけど………。

「はぁ、迎えにいくか…………。」