「その前に、一つ聞きたいことがあるんだよ。」
「何。」
「その弓景さんって、今俺らの一個上？」
「そうだけど。」
「じゃあ、確定だわ。」
「早く言ってよ。」
「そう焦んなって、いい噂じゃないんだし。」
絶対面白がってる。
こんなやつといたらストレスで胃に穴があきそうだ。
まだ兄さんの方がマシ。
「誰にも内緒だからな。」



「その人、もうすぐ死ぬかもしれない。」



「は？」
耳がおかしくなったのか。それともこいつの脳がおかしくなったか。
「何、言ってんの。」
「真実を口にしただけだぜ。予想以上に驚いてるじゃねぇか。」
そんなかと言われたら誰だって驚くだろう。
「うるさいよ。………なんでそんなことが言えるのか、説明してよ。」
「新聞であったんだって。弓景って苗字をどこかで聞いたことがあってなんとなく調べてみたら、はいビンゴって感じ。」
新聞だっていってもそう最近のものじゃないはず。どこまで噂如きに本気になってるのかこいつの気が知れない。
いや、“どこまでも”本気だからここまで出来るのか。
ただの他人のために_______________。
「あ、まだ澪月には内緒な。所詮噂話だから。もっと情報集めて、真実味を増さないと。」
じゃあな、と勝手に出ていく澄。
また部屋に1人。
先程までの騒がしさはどこかへ行ってしまい、すごく静かになった。


「哀川さん、弓景先輩もう学校来ないかもね。」

誰もいない、誰も聞いているはずのないのに、一人呟く。
哀川さん、悲しむだろうな…………。