気がついたら3限目までが終わっていた。
「あ、おはよう。緋山君、次は移動教室だよ。」
「………いつ寝た?」
記憶の片隅にもない。
気がついた頃にはもう眠っていたのかもしれない。
「私があーちゃんと話終わって戻ってきた頃にはもう寝てたよ?起こした方が良かった?」
あーちゃん……?
さっきのクラスメイトのあだ名か。
「……別に。どっちでもいい。」
「分かった。」
「次って何。」
「次は英語だよ。」
「じゃあ、寝る。」
「えっ!ダメだよ、起きてなくちゃ。」
哀川さんはそうやって言うけど、別にやらなくてもできるんだったらわざわざやる必要は無いと思う。
だけど、哀川さんが言うんだったら頑張って起きてみてもいいかなとか思ってしまう自分がいる。
「………はぁ。分かった、努力はしてみる。」
なんでなのかは全くわからないけど。

「ねぇ、緋山君」
「何。」
「眞白先輩のことどうしたらいいのかな。聞いてもいいこと、なのかな。」
家庭環境が崩壊している、なんて聞いたらそこに踏み込んでいいのか悪いのか分からなくなる。
「僕がわかるわけないでしょ。」
「うん、だけど、緋山君に聞いたら何かわかるような気がするんだ。」
と、笑いながら話す哀川さんの横顔はなぜか寂しそうで。

「隠されてたのがそんなにショックだったの?」
「えっ!」