一つ深呼吸をしてみれば始めに宙に浮いた感覚とは違って、浮いていても地面に足が着いているようなしっかりとした感覚を足で捉える。



「立てたか。これで赤子と同等の位置から少しは成長したな」


「し、仕方ないじゃないですか!!」


「まあ、いい。後は――」



嘉さんが言いかけた言葉を放つ前に私の腕を掴んだ。


とんっと額が嘉さんの胸に当たる。


抱きとめられたと分かったその直後に、バリバリと響く爆音に体がびくりと反応する。


嘉さんの舌打ちが聞こえたかと思えば、凄まじい咆哮が鼓膜を揺らす。



「これだけの妖気を、どこに溜めていたんだあやつは……」



恐怖心がジワリと滲んでくる私に対して、嘉さんは呆れたように鬼を見つめる。


スッと抜いた刀が鋭い光を放つ。



「いいか、童。これから俺はお前の本来持つべき力を引き出す。――俺が合図するまで絶対、動くなよ」



静かにそう言うと刀を構える。


またよく分からない説明を……って思った瞬間、嘉さんが凄まじい速さで鬼の元へと向かった。


動くなという指示なんかしなくたって動けるわけない。


そう思ってたのに何故か左手を引っ張られるような、そんな感覚に体がグラグラする。