でも、あんなのと戦うなんておかしいとしか言いようがない。



「あれは遣いにはできんが……そこそこの利益は得られよう」


「嘉様、加勢は」



ピッタリと嘉さんの元へ着いてくる伊鞠くんの声が少し強ばっているような気がした。


そんな伊鞠くんに気づく事もなく、嘉さんは私を見つめた。



「いや、いい。こいつの力を引き出せるようにする」


「待って!私も戦えって言うの!?」



イエスかノーの答えの代わりに口角を上に上げる。


何故か楽しんでる嘉さんに恐怖心を覚えた。


戦うって言ったって、こちらは生身の人間。


力なんてものも使い方が分からない。


ごくりと唾を飲み込んで嘉さんを見た。


ちくりと痛む手首に顔を歪めると、嘉さんは私をそっと下ろ――


って落ちるっ!!!!



「変に体に力を入れるな。落ち着け」



そう落ち着いた声が耳元でハッキリと聞こえる。


その声に撫でられるように、パニックになりかけた頭が落ち着いていく。