近づいてくる大きな足音がピタリと止む。
静かなはずなのにうるさく聞こえるのは私の鼓動と音なのなか、別の音なのか。
「嘉さん、一体何が――」
「来る」
私の声を遮って嘉さんがそう言うと、突如木々がバキバキと折れ始める。
舌打ちをしながら私を抱き抱えると高く飛び上がる。
森の外へと出ると体が軽くなったような気がした。
霧に包まれた森が土埃と共にその濃さを増す。
「見ろ」
顎で示された方向を見ると目を見開いた。
「なに……あれ……」
さっきまでの妖とは比べ物にならない程の大きな大きな……鬼。
先程の場所にいたら完璧に踏まれてペチャンコになってた。
全身真っ黒に染まったその鬼はこちらに向かって吠えた。
「この森の主といったところか。西の京もこんなのを放ったらかしにしておいて……落ちぶれたものだな」
「嘉さん帰ろう!!あんなのと戦って意味なんてないでしょ!?」
「何を馬鹿な事を言っている。あれを葬るためにここに来たんだ」
この人、正気!?いや、おかしいのは出会った時に知ってるけど!!