キョトンとした私の顔を見て反省をしていないと捉えた嘉さんは、私のこめかみをグリグリと強く押す。
「いっ痛い痛い痛い!!!」
「いいか!見知らぬ土地に来た場合は俺から離れるな!」
「は、はいぃ!」
痛みで涙目になりながらそう答えるとグリグリと押していた嘉さんの手が消える。
「まったく」
「ご、ごめんなさい。でも、私自分の足で迷子になったわけじゃなくて……」
「なに?」
何かを疑うように私を見て、バッと辺りを見渡した。
刀を構えながら、私を庇うように片手を広げる。
伊鞠くんの尻尾がピンと立つと、森の奥から地響きが起こる。
「あんな雑魚なわけなかったか」
「嘉様。来ます!」
「いいか童、絶対俺から離れるな。何があってもだ」
真剣なその声に、頷くことしかできない。
すると左手に糸が現れたかと思えば、熱を帯びるように光り出す。
嫌でも感じられるこの禍々しい空気に酸素が足りない。