森へと続く獣道を歩いていく白い着物の嘉さんがやけに目立つ。


私のことを見向きもしないでどんどんと進んでいく。


一歩そこへと踏み込んだら完璧に迷いそうなそんな暗い森。


その後ろをいつの間にか追いついた伊鞠くんがトコトコとついて行く。


私を連れてきた意味があるのかどうか、ため息をつきながらそれを考えると、背後に何かいる……そんなような気がして後ろを振り返る。


すると、私の横を影のようなものが横切る。


追いかけるように前へに向き直る。


何かがピョンピョンと跳ねるように先へと進んでいく。


……あれも嘉さんの僕?


首を傾げかけて、動きを止めた。



「私一歩も動いてないのに……なんで森の中にいるの?」



さっきいた場所はまだ森の入口付近だったのに。


どこかで烏が不気味に鳴き、大量の鳥が一気に羽ばたく音に肩をビクリと震わせる。


白い薄らとした霧が辺りを充満して、黒々とした幹が連なった木々が外からの光を遮断していてやけに暗い。


長くその背丈を伸ばした草達が私の足に絡みつく。