ごうっと強い風が髪を弄ぶように、ぐちゃぐちゃ絡ませていく。
あまりの強さに反射的に目を閉じると、くくっと喉を鳴らしながら笑う嘉さんの声が聞こえる。
何かの花の匂いのような優しい匂いが鼻をくすぐる。
懐かしいようなそんな気がして、そっと目を開ける。
「……!!」
食いかかるように、その景色をじっと見た。
先程までいたあの場所じゃなくて、一体ここは……どこ?
綺麗な桔梗の花が辺り一面に咲き誇っている。
まるで私達を迎えるかのように。
「流石は巫女の血を引いているな。100年以上荒地だったこの地に神華(かんか)を咲かせるとはな」
「かんか?」
「お前がここに来る時にも咲かせただろう。力を感じると咲くあの花だ。まさかこんなに咲くとは……予想外だったが」
「それって――」
「それ以上口を開くな。舌を噛むぞ」
言いかけた言葉を遮るように嘉さんがそう言うと、また強い風と共に軽い振動を感じる。
言われた通りここは黙っておこう。
言われるがまま、されるがままに嘉さんに体を預けた。